Only you . (ページ25)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:47,021 hit

25 ページ25

.

「………じゃあお前がAを幸せにしてやったら」

「……僕、どうしたらAを幸せにできる？」

「………お前さ、なんかフラフラしてそうだけど仕事何してんの？」

「…………」

「…まさかニートな訳？」

だって、僕、元は人間じゃないし。

普通に生きてきた訳じゃないから、同年代であろう人達とは置かれている状況が全く違うんだ。目の前にいる、海とも。

「……今のままじゃ到底無理だよ」

そう吐き捨てて、海は背を向けて歩いて行った。次第に人混みに紛れて、すぐ見えなくなっていって。

………もうわかんない。

またそのまま歩いて歩いて、道の途中にあったシャッターの前で膝を抱えて座り込む。…疲れた。お腹空いたなあ、と考えながら目を閉じた。思い出すのはAの事と、Aの作る美味しいご飯の事。

………会いたいなあ。

.

「……ただいま、」

家に帰ってももちろん１人で。

…こんなに静かだったっけ。今までの事なんて幻みたいで。１人でご飯を食べて、１人で眠りに就いて、また１人で朝を迎える。

１人って、こんなにつまらないものだっけ。

『A～おかえり！』

そう言って笑う姿を思い出すと、鼻の奥がツンとしてジワジワと涙が浮かんでくる。

またいつか、戻ってきてくれるのだろうか。

.