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「ちょっと俺トイレ行ってきますね」
「あ、うん」
心地悪さを感じながらも、暫く談笑をしていれば、櫻井くんは席から立ち上がり、突き当りにあるトイレに向かって歩いて行った。
その後ろ姿が遠ざかって行くのを、ぼーっと眺めていると
「ねぇ、もう翔さんに乗り換えたの？」
不本意な言葉がすぐ近くで聞こえた。
ついでに、さっきまでの甘く優しい顔を、あっという間に苦い顔に変えていた。
やっぱり酔ってなかった。お酒を飲む前と変わらない顔色。
白すぎるぐらい白い肌。
「違いますっ！櫻井くんとはそんな関係じゃないです」
「え？そうなんだ？」
見当外れ、といったような顔して、納得いかない表情を浮かべた彼。
心地悪いこの空間に残された私と、お隣さん。
「そうですよ！というか櫻井くんに失礼です」
「ふーん」
強く否定すれば、彼は興味ないといった口調で適当な生返事。
そんな彼に少し苛立ちながら、ビールのジョッキを持つその手が、スーツの内ポケットへと流れていく動きを水の入ったグラスを傾けながら視界の端で見ていたら
「タバコ、吸っていい？」
薄い唇の端にタバコを咥え、朝見たときと同じようにライターでジュポッと火をつけた。
「訊いときながら、もう火つけてるじゃないですか」
フーと煙を吐き出す唇が、なんだか色っぽい。
そんなことを思ってしまうのが、なんだか悔しい。
ああ…もう…何考えてんだろ私。
余計な感情を取り払うように、わざと強めに持っていたグラスをテーブルに置いたとき
「俺、二宮和也ね。和也って呼んでいいよ？」
白い煙がふわっと舞うと同時に、彼はまた甘い顔に戻してた。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2017年12月22日 18時
