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振り向いた顔は、やっぱりあの“お隣さん”で、目をパチパチと何度か瞬きさせてもやっぱりそうだった。
まさかこんなところで出会うなんて思いもしなかった。
今まで顔を合わせるのは、エレベーターか家を出たときぐらいだったから。
本当に驚いた。
「あれ、翔さん」
“翔さん”と薄い唇が動いたあと、その目は私をパチン、とまるでシャッターを切るように捉えた。
「また会ったね」
お酒の入ったグラスをテーブルに置き、彼はふっと小さく笑って、ゆっくりと高いイスから立ち上がった。
「え？Aさん和也と知り合いですか？」
「あ、ええっと・・・」
「あ、俺ら隣人なの」
櫻井くんの問いかけに、まだちょっとこの状況を上手く呑み込めてない私より先に彼の少し高い声がそう答えた。
「え！隣人！知り合いなんですね！…あ、じゃあ和也これから一緒にどう？」
「俺は別にいいけど、…A？さんはどう？」
朝見た顔が嘘みたいに、“和也”と呼ばれたお隣さんは
甘く少し優しい顔で私を見つめ、私の名前を面白そうに薄い唇から零した。
そのせいで、その顔に、その唇に
「うん」としか頷くことができないのが可笑しかった。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2017年12月22日 18時
