薄桜鬼 涙は伸ばした手をすり抜けて〜貴方に触れたくて〜

第38話:大事なもの ページ39

A)…父さん、母さん、もうすぐ来るの？

父)あぁ、お前は奥にいなさい。後は私たちに任せなさい。

A)…でも…

父)大丈夫だよ。何も起こらないから。

その言葉を信じた私が馬鹿だったんだ。
弾き人にとって、音楽は命と言ってもいいものだ。
人間は私たちの村に来た。
私たちの大事な大事な音楽を、楽器を全部奪おうとした。

それに加えて、私たちの人間じゃない力を恐れた。
人は恐怖を戦って紛らわすものだ。
…そうだ、やっぱりあの時逃げていれば良かったんだ…

楽器は、音楽は大事だ…
でも、それ以上に大切な物を奪われてしまう前に…


A)父さん、母さん…

母)やめてぇぇぇえ！！！私たちからこれを奪わないで！！

A)母さん…？

父)それは娘の何よりも大事な物だ！！それだけは返してくれ！！

A)父さん…？


声のする方に向かえば怪我をした父さんと母さんがいた。
私の大事な大事な箏を必死に抱えて…

A)父さん…母さん…

そんなのいいから…

人間)約束だろ。お前たちに居場所をやる代わりに俺たちに金になる楽器を全て貰うとな。

人間)その約束を破るのなら…

カチャッ…

父)でも、これだけは！！

母)お願いだから！

そんなのいいから……

A)母さんっ、父さん。

銀色の刃がいつもより恐ろしく見えた。

父)これだけは渡せんのだ！！

そんなのいいから！！

ブンｯ！！

A)父さん！！母さん！！


何かが刃によって貫かれる音がした。
目を開けた先には力なく倒れてる父が見えた。
真っ赤に染まって倒れていた…







本当に些細なことだ。
私の箏なんて守らなければ…
どうして楽器だけで人が殺されるの？

どうしてこんなことの為だけに村が消えたのかが分からない…

弾き人にとって楽器は命だ。
でも、それよりも大事なものは父さんと母さんだったのに…

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