薄桜鬼 涙は伸ばした手をすり抜けて〜貴方に触れたくて〜

第22話:ハッキリ ページ23

沖田)音楽がわかる？どういうこと？

千鶴)…私も故郷や家のことを全て思い出した訳ではないですが、Aさんと同じ弾き人がいたことは確かです。その人の奏でる音楽は村のみんなを魅了しました。

そう、幸せを奏でて歌っているような…
本当に幸せだったのかは分からないけれど…

沖田)ふーん…少し興味深いね。

千鶴)今分かってるのはそれだけです。後は何とも…

沖田)そっか、ありがと。

それだけ言うと沖田さんは部屋を出ていった。

千鶴)……私も寝よう…

A)よく、人の事喋ったね。

千鶴)っ！Aさん…

Aさんは隠れて聞いていた。

千鶴)…沖田さんには隠し通せないです…

A)あの人、勘だけは鋭そうだもんね。それにしても、私達が音楽が分かるってよく気付いたね。褒めてあげるよ。

千鶴)やっぱり…

A)弾き人はそう言う人なの。いいや、人じゃないね。種族だ。

千鶴)…貴方は種族を隠して生きてるんですか…

A)当たり前だよ。鬼と近い種族だから。まぁ、バレたってどうもしないけど。

千鶴)人間は憎まないんですか…

A)質問の多い子だね。その質問は自分は人間が憎いのか分からない的な感じに聞こえるんだけど。

千鶴)そんなっ！

A)冗談だよ。人間ね…嫌いではないよ。

千鶴)……

A)…あんまりつまんない事質問してないでくれる？真面目に答えてるこっちが馬鹿馬鹿しく思えてくる。

千鶴)…Aさんはっ！！

A)千鶴ちゃん。憎いなら憎いでハッキリしなよ。

千鶴)っ！！

A)君、一旦落ち着いた方がいいよ。

千鶴)っ…！

そのままAさんは部屋を出ていった。
何であんなにもあの人は私の心を抉るのだろうか…

千鶴)ハッキリしたら……ハッキリしても何も変わらないのにっ…

過去と今は共にあるわけじゃないのだから…

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