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「万全の準備も基礎知識も足りないままで、むやみに魔法を使うのが危険だって事、君はもう知ってるはずだ」
俯くココに私はそっと声をかけた。
「私も大慌てで魔法を使ってしまう時は、失敗するの。それくらい、事前準備っていうものは大切なんだよ」
「A先生も失敗することがあるんですか…?」
「勿論。いくら正確に魔法が使えるからって、失敗しない人はいないよ。でも準備を怠るとその失敗が命取りになる。ココ、今回は上手くいって本当に良かった。でももう二度と、こんなことはしないで?」
「はい。ごめんなさい、A先生、キーフリー先生…」
「それに…危険を冒してまで証明しなくても…」
キーフリーは大講堂で貰ってきた荷物を持ち上げ、ココに手渡す。
キョトンと私の方を見るココに、開けてみてと笑顔で言うとすぐさまココの表情が明るくなった。
「君はもう僕とAの弟子だよ」
その中から出てきたのは私の魔法服によく似た色の制服。早速ココは腕を通し、両腕を上げて感嘆の声を漏らす。
「ココ、一番大事なものを忘れてるよ」
「あっ」
ココの足下にあるとんがり帽子を拾い上げ、優しく頭に乗せる。その色はココの綺麗な明るい髪色にもよく合っていた。
「大事にするんだよ」
「はい!」
私は笑い合うキーフリーとココをカラになったバッグを持って眺める。少し後ろで事の成り行きを見守っていたテティアもとても嬉しそうだ。
「テティア、今日のご飯は何がいい?」
「ココのお祝いだから、豪華なのが良いな〜!」
ワイワイと話しながら、私たちはキッチンへと続く階段を降りた。
・ ・ ・
「燃えてるーっ!!」
そんな叫び声が聞こえてきた、とある日の朝。
自室で魔法研究に没頭していた私は慌ててその声の元へ走った。
「あ、A先生!おはようございます」
「おはよう、ココ。燃えてるって叫び声が聞こえて飛んできたんだけど、大丈夫?」
「それならテティアが消したからだいじょーぶ!」
見ればココの近くに水に濡れてしまった炎の魔法陣が落ちている。
「炎の練習をしてたの?」
「はい、アガットから借りた靴をちゃんと直してから返そうと思って…」
「すごい!新品みたいになってる!」
ココが直した靴をキラキラした目で見るテティアに私は笑顔で言った。
「ココのお家は仕立て屋さんでね、ココもすごいんだよ」
「ほへぇ〜そうだったんだ!」
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アストル(プロフ) - 通行人Mさん» 2回目のコメントありがとうございます!また来てくださって嬉しいです(´˘`*)ほんとに中々ありませんもんね...私も少しずつわかってきた原作の設定を織り交ぜていこうと考えています。オチをどのようにするか迷いますね.... (2020年2月23日 22時) (レス) id: b8413c3aa3 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 単行本買ってから思い出して来てみましたー。それにしてもΔ帽子の夢作品増えませんね…設定が緻密でまだまだ謎が多いから難しいんですかね…。これからもちょくちょく覗きますね。 (2020年2月23日 19時) (レス) id: cbf5c5978e (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - うわわ…ほんと…好みです……ありがとうございます…… (2019年7月31日 20時) (レス) id: ea843ff10e (このIDを非表示/違反報告)
月夜魔法 ルナ - すごくおもそろかったです! (2018年7月15日 10時) (レス) id: 26180cce76 (このIDを非表示/違反報告)
タルト(プロフ) - 読んでいてとても楽しいです。読みやすく最高です!!これからも頑張ってください、応援しています! (2018年5月17日 19時) (レス) id: ac7dbf19f0 (このIDを非表示/違反報告)
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