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「 じゃあ、適当な2人ペアで準備体操から〜 」
私の一番嫌いな言葉、''適当な2人ペア''。
この体育の先生は私が一人でいることを知って言っているのだろうか。
案の定一人余って、毎回のように先生と組む私を周りの女の子は気にしない。
ひとりが嫌なわけじゃない、一人でいられるところを見られたくないだけ。
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体育が終わって、次の時間はHRだった。
内容は席替えで、いつも運悪く前の席を引く私でも、今回は窓際の一番後ろという最高の席を手に入れた。
しかし、「どこだった?」「え〜離れた」なんて会話をする友達すら私にはいない。
暗い性格ではないんだけど、なんて心の中で言い訳をする。
ちら、と隣を見ると春から一度も来ていない「京本くん」という男の子の席が私の隣にあった。
京本くん、については少しのことしか知らない。
一年生の時、クラスの女の子がイケメンだと騒いでいた。
どうやら毎年出席日数がギリギリらしいけど、この休み具合だともう留年は免れないらしい。
直接あったことも無ければ、顔も見た事がない。
そんな彼が、少しだけ気になった。
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高校一年生のとき、小説のコンテストになんとなく応募したら、大賞を取った。
ニュースやテレビで取り上げられることに驚いて、顔は出さなかった。
名前も【A】で活動していたから、私だとはきっと誰にもバレてはいない。
でも、二作目を出した直後から、全く何も書けなくなった。
そこから、私は逃げるように本から目を背けた。
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昔から勉強は好きだった。
小学6年生の頃に両親を亡くした私は、数回しかあったことのない親戚の家に預けられることになった。
学費は奨学金と親が残した遺産から出して、あとはバイトでお金を賄っている。
お世話になって約6年になるけど、
正直、あまり居心地は良くない。
「今日から家族」と言った割に他人行儀で、
私のことについて何も聞いてこない。
それどころか、日常で会話を交わすことがほとんどない。
勿論、三者面談にも顔を出したことがない。
お酒、タバコ、ギャンブル、ありとあらゆるものに手を出しているような大人だった。
そんな大人にはなるまいと、必死で勉強をした。
少しでも家にいる時間を減らしたくて、高校に上がってからはバイトを始めた。
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作者名:a. | 作成日時:2020年10月17日 22時