おとなりさんちのあのひとは【M/S/S/P】【完結】

はぐるまがあう ページ35

忘れるべきなのかもしれない。そう、思った。返ってこない返事を今日も確認して、画面を消した。

背もたれにもたれて、パソコンに目をやった。今日までに片付けたい仕事が進んでいない。というか気持ちが入らないから全く進まないのだ。理由は、あの人だった。隣に住んでいる、あの人。あの人がえおえおだった、なんて。偶然にも程がある。

ただ、少し似てる部分がある程度だと思っていた。それだけだった。でも、きっくんに声をかけられて確信した。証拠なんていくらでもある。これまでのことを思い出せば、いくらでも。

きっくんと出会ってから、もうずっとあの人からの返信はない。おそらく、きっくんが私と話したことをあの人に言ったのだろう。彼も、えおえおだとバレたことを知っている。

ため息をつく。今はとりあえず、目の前の仕事を片付けなくちゃいけない。今日は終電乗れるだろうか。タクシーでお金を使うことは避けたい。その金で画集を買える。

忘れてしまおう。現実を忘れられるコンテンツなんて、いっぱいあるじゃないか。家に帰って、溜めてたアニメとか見てしまおう。そうすれば、忘れられるはずだ。


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がたん、ごとん。

列車が揺れる音で目を覚ます。寝ぼけた頭が一瞬で覚め、今どこに向かっているかを確認する。どうやら最寄りに着く前に起きることができたようだ。

それにしても、なんで日中に考えていたことをそのまま夢で見るのだろう。相当悩んでいると言うことだろうか？中学生じゃあるまいし悩みすぎなんじゃないだろうか？もう私良い大人なんだけど。

アナウンスが、最寄りの駅の到着を知らせる。少し怠い体で立って、ホームに降りた。今日も人は全然降りない。一応ここも都会のはずなのだけれど、なんでなんだろう？東京に出てから、そこだけが疑問なままだ。

改札を出てすぐに、コンビニがある。今日は何か買おうかな、と思っていると、コンビニから男の人が出てきた。その人と、目が合う。


「A、さん」


悩みの元凶が、そこにはいた。

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