20212022 / りりー ページ22
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段ボールまみれの部屋で壁掛けの時計を見上げれば、今日がもうすぐ明日になるところ。
少しずつ少しずつ荷物をまとめて、断捨離をして。
あと数日というところで、やっと、それなりに片付いてきた。
なのに、肝心の "実感" が湧かない。
年が明けたらお引っ越し。
住み慣れたこの部屋ともサヨウナラ。
すぐに新しい仕事も始まるし、スーツも新調しようかな。
面倒な荷解きも待っている。ぼーっとなんてしていられない。
♫〜
そんな感じで物思いに耽っていると、不意にスマホが鳴り出した。
「...はい」
『あー、俺。何しとった？』
「部屋の片付け...でももうやめた」
『ふーん』
「なかなかはかどらないんだよねー」
『大丈夫なん？それ前も言っとったけど』
リリーさんの声と、壁のカレンダーが私を睨んでくる。
『間に合うん？明日から帰省やろ？』
「うん...」
『一週間やったっけ』
「そう...」
私の手を鈍くするのは、単純に面倒だから、だけじゃない。
リリーさんの東京の家に一緒に住むことになって、私の生活は一気に変わり始めた。
新しい仕事探し。今の仕事の引き継ぎ。この部屋の解約手続き。それに引っ越し業者への手配。
やるべきことを次々こなしながら、一日一日、その日がくるのを指折り数えて過ごしてきた。
だけど、心待ちにしていたのは最初だけで。
Ｘデーが近づくにつれ、段々気持ちが沈んできた。
よく考えたら、いくらつき合っているとはいえ荷が重すぎる。
リリーさんと同棲、なんて。
(...だって、なんか怖いじゃん...)
知らない女の子が突然訪ねてきたり、とか。
ポストに変な手紙が入っていたりとか。
恨まれて夜道襲われたりとか。って、それは大袈裟すぎるかもしれないけど。
『もうちょい早よ帰ってこれん？手伝うわ』
「え、いいよ。自分でやるから」
『ていうか、早よ帰ってこい』
思いがけない強めの声に、返事に詰まる。
『引っ越し間に合わんくなったら困るやん』
「...大丈夫だってば」
『間に合わんかったら、俺が困る』
声が、今度は少し小さくなる。
『待ち遠しいんやって、...わからん？』
この人、照れてる。
そう気づいて、私まで顔が熱くなった。
『...まあ、とにかく早よ準備終わらせろって』
「うん。がんばる」
『早く来年になればええな』
「そうだね」
あ、なんかすごくワクワクしてきた。
これが "実感" というやつなのかな。
fin.
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えむ(プロフ) - HanNAさん» こちらこそいつもありがとう☆また来年もよろしくです！！ (2021年12月31日 8時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
HanNA(プロフ) - えむちゃん、いつも素敵なお話ありがとうございます！よいお年をお迎えくださいー (2021年12月29日 1時) (レス) @page26 id: ea9d2e9102 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - みかみかさん» コメントありがとうございます☆あー、良かったですー。喜んでいただけて、ほっとしました^_^ いろいろ想像しながら書くのが楽しかったです☆こちらこそ良い機会をありがとうございました。是非またどうぞです☆ (2021年11月6日 20時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
みかみか - 早速読ませていただきました！！もう最高でした！キュンどころじゃないですズッキュン心ぶち抜かれました（笑）えむさんの言葉選びほんとに好きです！素敵なお話ありがとうございました(T▽T) (2021年11月6日 6時) (レス) id: b0f25e0f76 (このIDを非表示/違反報告)
みかみか - えむさん» はい！もちろんゆっくりで大丈夫です！読んだ後感想も書かせて頂きます！素敵な作品お待ちしてます！ (2021年11月1日 23時) (レス) id: b0f25e0f76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年9月19日 22時
