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「どうも」
「はい」
「.....」
(...あかん、なんやこれ)
隣に座ったはいいけれど、言葉が出てこない。
その顔を至近距離で見た途端、頭が真っ白になって、どうしたらいいかわからなくなった。
緊張感が全身を硬くする。
本当に、こんな経験は初めてだった。
「あ、次何飲みますか？」
「えっ、あぁ」
Aちゃんの目が俺のグラスを見ていた。
残りのビールは３分の１ほど。次を注文するちょうどいい頃合いだ。
こういう気の利いた感性に、また心を掴まれてしまう。
他の子達とは違う、優しくて落ち着いた声のトーンが、心地よく耳に響いた。
メニューを見て考える余裕もなく、結局注文したのは同じ物。
気を取り直し、何を話そうか...と思い巡らせていると、Aちゃんが俺の顔を覗き込んできた。
「私も見ましたよ、こないだの特番」
「あ、ほんま？」
「本当に面白かったです」
「まじで」
意外な言葉に驚いて、でもそれ以上に嬉しくなった。
「はい、すごく」
「なんかあんまり興味なさそうやったから」
「俺に」なのか「お笑いに」なのかは、曖昧にしておく。
「ほら...他の子達とはちょっと違うやん？」
"他の子達" に聞かれないようにボリュームを落として言うと、Aちゃんはちょっと困ったように笑った。
俺としてはいい意味で言ったつもりだったけれど、真逆に捉えられたのだと、その返事を聞いてわかった。
「私、場違いですよね。他の人が急に都合が悪くなっちゃったらしくて、代理で来たんです」
「そうなん」
「だから、ここが終わったら帰ります。みんなは二次会の話もしてたけど...明日も早いし」
始まったばかりなのに、もう終わりの話をしている。
この場を楽しめていないことや、既に帰るときのことを考えているのだと知って、悲しくなった。
俺のほうは、君との出会いに昂るテンションを抑えようと、必死だというのに。
独りで帰るだなんて、そんなこと言わないで。
「今日は河井さんに会えて嬉しかったです。お仕事頑張ってくださいね、これからもTVの前で応援します」
俺を見る優しい笑顔に、心がまっすぐに引き寄せられた。
「...あのさ、」
「はい？」
「ふたりで抜け出さへん？」
君のことを、もっと知りたいから。
驚いた目で見返され、緊張がピークに達した。
返事を聞くまでの数秒間、胸の高鳴りを悟られないよう、俺は息を潜めて待つだけだった。
fin.
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えむ(プロフ) - HanNAさん» こちらこそいつもありがとう☆また来年もよろしくです！！ (2021年12月31日 8時) (
レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
HanNA(プロフ) - えむちゃん、いつも素敵なお話ありがとうございます！よいお年をお迎えくださいー (2021年12月29日 1時) (レス) @page26 id: ea9d2e9102 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - みかみかさん» コメントありがとうございます☆あー、良かったですー。喜んでいただけて、ほっとしました^_^ いろいろ想像しながら書くのが楽しかったです☆こちらこそ良い機会をありがとうございました。是非またどうぞです☆ (2021年11月6日 20時) (レス) id: 811416b436 (このIDを非表示/違反報告)
みかみか - 早速読ませていただきました！！もう最高でした！キュンどころじゃないですズッキュン心ぶち抜かれました（笑）えむさんの言葉選びほんとに好きです！素敵なお話ありがとうございました(T▽T) (2021年11月6日 6時) (レス) id: b0f25e0f76 (このIDを非表示/違反報告)
みかみか - えむさん» はい！もちろんゆっくりで大丈夫です！読んだ後感想も書かせて頂きます！素敵な作品お待ちしてます！ (2021年11月1日 23時) (レス) id: b0f25e0f76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えむ | 作成日時：2021年9月19日 22時
