お疲れ社会人は推しを応援したい【ブラスタ】

オチなんてない ページ11

猫は子供を連れて移動する際、子供の首を咥えて歩くことがあるらしい。本能的に首の部分の痛覚が鈍いことを知っているからとかなんとか。なるほどね。
私も何度か見たことあるけど、あれ本当に癒される。猫がそもそも可愛いから、可愛いものが可愛いものを咥えていればそりゃ可愛いよねって話。

それに比べて、厳つい男性(成人済み)がくたびれたOL(勿論成人済み)を引き摺っていく光景は中々にシュールというか、普通に事案である。どうしてこうなった。


｢こんだけ店の近くに着てりゃ大丈夫だろ。お前ほんと、危機感持てってなんべん言わせんだ｣

｢さっすが兄貴！舎弟を連れて路地裏を縦横無尽に駆け抜けるなんてマジ漢の中の漢としか言いようがないっス！できればそろそろ放して欲しいっス！｣


ふざけた口調でそう言ってみたら、瞬時に彼の腕から放り出された。女に対する扱いがなってないんですけど！
そう言いたいのを視線に込めてじとっと見上げてみると、元はと言えばお前のせいだろと超軽い手刀が返ってくる。どうでもいいけどなんで私達意思疎通取れてんの…？


｢……いい加減観念して送迎つけろよ｣

｢えー。そりゃちょっと勘弁勘弁。私の快適かつ開放的な推し事のためにそこは譲れない。とりあえずありがとうね兄貴｣

｢兄貴呼びすんな｣

｢すみませんでした｣


めっちゃ不機嫌な顔をされたのでその場で土下座した。
なんでそんなに怒んのさ。兄貴呼びしたいキャスト不動のナンバーワンのくせに！スターレスの女達にたまに兄貴呼びされてるくせに！あのミズキですら、黒曜は兄貴っぽいよなって言ってた！！あれ素晴らしく尊くない？？？

見た目と発言は物騒だけどなんだかんだ面倒見がいいこの男、先程スターレスまで向かう道中の裏道で変な奴らに絡まれていた私を回収してきたばかりである。手際がよすぎて泣いた。実はヤクザだったの？？荒事には慣れていらっしゃる？？

何してたんだか説明しろと言われ早口に事情を喋ること数分、いつの間にか場所は路地裏からスターレスのホールに変わっていたから笑った。私の目的地言ってないのに当然のように案内してくれるの、もはや恒例行事ですね(遠い目)。

何してたんだも何も無い、近道しようと裏道に入ったらやべー奴がいた、同じくらいやべー奴が助けてくれた、正直そう言う他ならない。それ以上のことはマジで無いんだってばよ！！
悲しいことに、兄貴にそんな説明は通用しない。こういう大人にならないようにね。

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