紫の花に踊らされ【短編集】

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懐に入っていた残り一本の煙草に火をつける。
クラシックライターに慣れるまでかかったが、今では簡単につけられるようになった。

咽そうなほど濃い煙を肺に閉じ込めてそれを吐き出す。

中毒性が高いとこの評判のこの煙草。
やめてしまおうか否かで迷うが、やっぱりやめた。

周りを確認してからアクセルを踏み、暗くなった街の中を進んでいく。

暖房をつけているおかげで暖かく、マフラーを乱暴にとって助手席に置いた。

なぁ神様とやらよ、もしくは運命。
なんでこんな酷いことを自分に強いるんだ。

前世でも報われなかったのに、今世でもこの仕打ちなんて。
そんな大罪、私は犯しただろうか。

前世、幼い頃から共にいた彼は私でない女を取った軍人の彼を庇って私は死んだ。

最後に泣き叫ぶアイツの顔は今でも忘れない。

あぁチクショウ、煙草を吸う機会が増えそうだ。

分かる、分かるんだ。
彼は西原が好きだと、横にいた西原を愛おしい瞳で見つめて会話していたことなど。

救われない、救われないなぁ。

遠に枯れたはずの涙がこぼれそうになり、慌てて腕でこすってぬぐいとる。

「いっそ、股の緩い女にでもなってやろうか」

アイツが好む姿は知っていたのに、それをしなかったのは馬鹿らしい意地。

あるがままの自分を愛してなど、甚だ傲慢だ。

尻軽女になった自分など彼は嘲笑うのだろうか。

ああもういい、いっそ彼に罵られるほど醜い女にでもなってみても面白いかもしれない。

ふっ、紫煙は自分を包み身体を殺していく。

まさに喜劇、笑いが止まらない。

目の前で死んで呪いをかけてもいいが、そんなことするぐらいなら、アイツに殺されたい。
バイクは今世でも好きだろうか、それならそれに引かれて死んだらきっと記憶に残る。

なんて、可愛くない。
こんなところが醜いのだ。

なぁ、ショートピース。

お前にはほんといい思い出がないよ。

短い平和なんてふざけた名前だ。


ぐしゃりと湿って吸い終わった煙草を潰した。







＿＿＿

50話、初めていきました
最後を飾るのがこんなオチって…いや！まだ結末は分かりませんからね、セーフでしょう

続編するかはまだ迷っていますが、やるなら同じスピードではやれないかな？まだ分かりません

もしコメントで続けてほしいとかあったら続けるかも…ﾁﾗｯ(露骨なコメ稼ぎ)

あっ、長編の方も進めるんで石投げないで！

……てことで、そんときはお知らせするんでよろしくお願いします

ノシ



2019/03/08 夜有

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