紫の花に踊らされ【短編集】

あいに ページ45

「愛ってなんだろうね」


眩い水色の空から注がれる光を手で遮りながら睨む


先輩、元気にしてますか

俺は受験の用意に部活の引退やらなんやらで、なんだかんだ元気のつもりです


「ショッピ君はなんだと思う？」


アンタが卒業前に俺に聞いた質問はそっちで見つけましたか？

A先輩がいなくなってからというもの、俺の頭からはその質問が離れません

特に勉強も必要ない大学に行くからってやることは多いんすよ？これじゃあ変なミスやらかしちゃうじゃないっすか


「恋ってなんだったんだろう」


水色に溶けれないアンタにどれぐらい救われたことか

だけど夕暮れに交じる紫はアンタに似合わなかった


それがどれだけ屈辱だったか、先輩が知ることはないんでしょうね


先輩がいなくなってから言うもの寂しくて寂しくてたまらない、なんて言ったら笑いますか？

けど本当なんすよ、A先輩にあいたくて毎日アンタのことを考えています


「いつか教えてね」


バイバイ、なんて手を振るアンタの最後の姿を見たのが俺で良かったですね、クソ先輩なら怒り狂ってましたよ

「馬鹿先輩」

手紙なんて寄こして、どれだけ俺の心に傷つけたらすむんですか

人より寂しがりやなアンタのことです、どうせそっちでひとり悲しく泣いてるんでしょう？

今からあいにいくんで、迎えに来てくださいよ？


がしゃりとフェンスを乗り越える

あぁ、本当に眩しいなぁ

俺が今見ている空は、先輩があの日見た空と同じだろうか


それならいいな、なんて


愛とは、恋とは何かと聞いた先輩へ


「それはきっと」


今の俺のこと









彼が最後に聞いた音は、自身が潰れるそれはそれは不愉快なものだったらしい

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