大人の扱い ページ33
「おじさんおじさん、ケーキ食べたい」
スーパーで今夜の飯の材料を買っているとき、珍しく我儘を言ってきたA。
中学の頃に親を亡くしたこの子を引き取ったときのことは、今でも鮮明に思い返される。
「珍しいな、そういうのねだるなんて」
ちょっとだけ驚いた様子を見せながら、手に持っていたチョコとチーズケーキのパックケーキを俺に見せてくる。
「だめ?」
首を傾げながら聞いてくる姿は、あまりにあざとく。
「別にそんぐらいええよ」
俺がそう言うと、彼女は控えめな花を咲かすかのような微笑みをしてカゴに入れた。
そこからは俺と一緒に肉の選別や野菜、魚をひとしきりをかごに入れていく。
昔はわざわざ作る労力と後片付けが面倒くさくて完全食を食っていたのに、彼女が来てからはそれが格段に減った。
なんで完全に減らないかというと、会社の昼飯はそれだから。
彼女に知られたときは呆れさせてしまった。
「今日は何作ってくれるん?」
「シチュー」
家にまだ残りがあるんで、使っちゃわないと
そう言いながら人参を選別する姿は高校生というより、もはや主婦だ。
「それと、シチューだけのつもりだったんですけど、ついでに冷蔵庫の中身無くしたいんでサラダも追加です」
「米くらいは炊いたるわ」
彼女はシチューにはご飯らしく、シチューだけで満足だった俺は初めて聞いたとき合うのか?なんて思ったが、これが意外と合うのなんの。
「じゃ、レジ行きましょ」
「せやな」
言われるがままにレジに並んで会計をする。
袋を詰めて外に出れば、びゅうと吹く風が肌を突き刺す。
バイクに乗ったらよりそれが強くなるのかと考えたら、毎回少しだけ嫌気が差してしまう。
それでもバイクを選んでしまうのはどうしてなのか。
「寒い…」
「俺より完全装備なのに、ほんま寒がりやな」
マフラーにジャンバーに手袋にニットの帽子を付けている彼女だが、それでも寒いらしい。
「いや、まぁ風は通らないんで前よりかは。ただ、やっぱり空気が冷たいんですよ」
ヘルメットを彼女に向かって放り投げれば、それを受け取って装着する。
それを見ながら俺も同じように着けてから、荷物を椅子の下に入れて閉めた。
「おじさんはバイク好きだね」
「小回りきくからな」
先に俺がバイクに跨り、次に彼女が俺の後ろに乗って落ちないように抱きついてくる。
寒いからか、夏よりも密着している気がする。
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百瀬のえる(プロフ) - 25歳shpおじさんとjkちゃん狂おしいほど好きです先生生徒好きは実はここ発祥ですjkとshpの組合せンァ゛゛゛゛ (2020年10月8日 1時) (レス) id: 90299a5c54 (このIDを非表示/違反報告)
夜有(プロフ) - えなさん» ありがとうございます!そう褒めてくださるととても嬉しいです…!まだ続編は決めてませんが、そのときはまた見ていってくれると嬉しいです(*´ω`*) (2019年3月8日 10時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
えな(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。貴方様の綴る物語が大好きで、短編の中にも夢主ちゃんの想いや情景が繊細に書かれていて読みながらとても心を動かされています。別作品もあってお忙しいとは思いますが、次回作があるのであれば心からお待ちしております…! (2019年3月8日 3時) (レス) id: 4d21cb4889 (このIDを非表示/違反報告)
夜有(プロフ) - 柚さん» ありがとうございます!カクテルは自分の中でも一番良作だと思っているのでとても嬉しいです。期待に添えるよう、頑張っていきますね! (2019年3月3日 2時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - 素敵です…特にカクテルの話が好きで何回も読み返してしまいます。これからも頑張ってください!! (2019年3月3日 0時) (レス) id: db3c90213f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜有 | 作成日時:2019年2月19日 14時