紫の花に踊らされ【短編集】

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翌日、シャオロンさんは普段通りの振る舞いをしていた。もしかしたら無理しているかもしれないが、少しだけホッとする。

今日は幹部になってから二度目のパレード。まだ国民たちの期待と興奮と尊敬やらなんやらが入り混じった瞳には慣れそうにない。

それでもまだ入って二年目の俺の名前を呼んでくれるというのはありがたいものだ。

ちょっとだけ嬉しくなる気持ちと同時に、まだあの写真に写っていた人物のことが頭に残っていた。

昼飯で食堂に行くとき教えてもらった、Aという女性の瞳が忘れられない。

これではまるで、と思いかけるたびに頭を振ってその考えを振り払う。

……写真を見ただけ、見ただけなんだ。



戦車に乗りながらのパレードは、国民達が目の前に来る幹部たちの名前を叫びながら花を投げて祝うというもの。俺の時は紫の花がたくさん空から舞降ってくる。

そして戦車に乗っている、ということは目線が高くなり遠くまで見渡せるということで。

すごい偶然だったと思う。
もしくは、あれを運命とでも言うのだろうか。

辺りを見回していると、流れに逆らい歩く女性が目に映る。俺達を全く見ることもせずに路地裏に入り込む女性がなんとなく気になって、そのまま姿を目で追いかける。そうして路地裏の目の前に来たとき。


＿＿そこには、眼帯をした黒い瞳の女性がいた。


一瞬のことだし、帽子を被って髪型は違っていたように見えた。だと言うのに俺の直感はあの写真の人だと告げてきた。

そして、一瞬だった。

だったのだが。


あの瞳と、目があった。


一瞬のはずなのに俺はゆっくりと時間が経つように感じられ、その間ずっとその瞳を見つめ続けた。

彼女もまた、俺の目を見ていて。

高まる心臓、熱くなる体と頬、震える手。

信じたくなかったが、これはもう言い訳ができない。


どうやら俺、ショッピはあの写真の女性、Aに一目惚れをしてしまったようだった。

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