紫の花に魅入らされ【短編集2】

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俺は、呪いをかけられた。

あんな言葉を吐かれて呪いにかけられないはずないし、囚われないわけ無いやろ？馬鹿な奴やなホンマ、忘れてほしいとか言っ取るけどホントは忘れてほしくなかったくせに。


溢れ出そうになる涙を耐えながら歯を食いしばる。いつの間にか火はほぼ消えかけ辺りは真っ暗になりかけていた。


一体人がどんな気持ちになったと思っとるねん、アイツ。自分がいい年だということも、軍人ということも忘れて肉塊に泣き叫んだ俺のこと知らんからか？あのあと立ち直れなかったんやからな。



「覚えとるよ、全部」


ちゃんと記憶してる。あの時のことも、それ以前のことも。


「でもな」


俺はもう、"ショッピ"ではない。

軍人のショッピに戻る気なんてさらさらない。


「今の俺は、俺や」


本当は自分を忘れてほしくなかったであろうA。自分で忘れてと言ったくせに、はじめましてと言ったときショックを受けてたA。強がるくせに寂しがり屋なA。


あれから避けられ続けているが、それで諦める俺ではない。むしろやる気が溢れてくる。

そもそも俺にとって前世なんて他人の人生と変わらないんや、逃げられたって困る。今世は今世で仲良くなりたいんやから。


「火が消えたんなら、また付ければええねん」


だから、Aさん。

"ショッピ"じゃなくて、俺を見てくださいよ。








今はまだわからぬ未来。

誰も分からない、知らない未来。

それぞれ身勝手な理由を押し付け合いながらも、それでも共に生きたくって。


いつか、お互いの手を取り合い歩むであろう未来。



それが幸せな未来でありますように。






「Aさん」

「っ、どうした、の？し、下の名前で呼んで。驚いちゃった、案外ショッピ君ってグイグイく、」

「ショッピじゃないっす。いや、あだ名はショッピですけど、それじゃなくてですね」

「……え？」

「ねぇ、俺の名前を呼んでください」






「俺は、俺ですよ」

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