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「いや、違くて……あー、そう、っすか……?……その、すんません」
「謝らなくたっていいよ」
「いや、そうじゃなくって……えっと……」
思惑通り安心して落ち着いたのかほっと胸をなでおろす彼を見てこちらも安心する。
とはいえ異性の同じ会社で同じ部署の先輩に見られるのは恥ずかしいのだろう。下がる眉とほのかに赤い頬は滅多に見られるものではない。
「そんなに心配?……あ、じゃあ今度のお昼ご飯奢ってよ。それが口止め料ってことで」
「あー……うっす。それなりに高いの出させてください」
苦笑交じりに言うその顔は他の女子達が噂するのも納得だな、とか思いつつオッケーと指で丸を作る。
その後はどうやら彼は他の知り合いの人たちと一緒に来ていたようで、その人達が出てきた頃に私はそこから離れた。知らない人だからって知人の知り合いの女性にその現場を見られるのは気持ちのいいものでもないだろうし。
さて、彼に何を奢って貰おうかな。
そんなことを考えながら帰路についた。
「ショッピ君。さっきの女性が噂の人か?」
「黙っててください……」
店から出てきたコネシマがショッピ君をからかう。
苛立つ気持ちを隠すこともせず舌打ちをする。が、コネシマにそれが通じるはずもなくただ大笑いをして彼の背中を叩いた。痛そう。
「ははーん、図星やなぁ?顔赤いで。そんでめっちゃ申し訳ないって思っとるやろ」
「ゾムさんまで……」
とはいえこんな面白いこと俺が乗らないこともなく、肘で突きながらニヤニヤと聞いてみる。きっと今の彼はなぜ俺らに想い人の話をしたんだろうと後悔していることだろう。
「ショッピ君が選んだ嬢、さっきの人とよぅ似とるもんなぁ!!あっはっはっはっはっ!!」
「それでスッキリしたところを本人にバッチシ見られたからな。まぁ良かったやん、選んだ嬢までバレたわけでもないし。約束も取り付けたんやろ?」
「だからって最悪のスタート過ぎるでしょ……!!」
そう言って頭を抱えこみながらしゃがみこんだ彼を、俺ら二人は笑いつつ慰める。
「好きな人に直接アタックできないからって、似ている嬢に己の欲をぶつけたあとにその本人と会っちゃったわけやもんな。ドンマイ」
「こと細やかに説明しんとってくださいよ!!」
「けど別に本人にぶつけた訳でもないし気にするほどのことかぁ?」
「心無いシマには分からんかったか……」
「ホンマ最悪やぁ…!」
こうしてすれ違う二人の夜は更けていった。
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夜有(プロフ) - 百瀬のえるさん» ありがとう御座います!いつかまた会えるときが来ましたら、そのときはよろしくお願いします。 (2021年1月1日 23時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬のえる(プロフ) - 更新ありがとうございました!大好きです!!お疲れ様でした! (2021年1月1日 23時) (レス) id: 90299a5c54 (このIDを非表示/違反報告)
黒音 - はい!それではお願いします! (2019年10月15日 16時) (携帯から) (レス) id: 11da0246b8 (このIDを非表示/違反報告)
夜有(プロフ) - 黒音さん» あ、いえ!その可能性も考えてたのにそこも確認してなかった私もすみませんでした。リクエスト承りました! (2019年10月15日 16時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
黒音 - 返信ありがとうございます!個人的にはハッピーエンドがいいですが作者さんの書きやすい方で良いですよ(それと夢主が死んだ後の事なのですが前世の時の事です。分かりづらくてすみませんでした) (2019年10月15日 16時) (携帯から) (レス) id: 11da0246b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜有 | 作成日時:2019年4月7日 22時