不思議な生き物 ページ1
ストレス社会の歯車の一人、Aはおぼつかない足取りでひとり家に帰っていた。はぁ、と白い息を吐きながら今日の晩飯のことを考え、家のドアを開ける。
「ぴっ、ぴっ!」
「ただいまぁ、ゆっぴ」
謎の鳴き声を出しながら近づいてきたでかい饅頭のような生物、ゆっくりは帰ってきたAに嬉しそうに飛びつく。
「ぴー、ぴ〜」
「わっ…ふふ、着替えたら早速ご飯にしようね」
そんなゆっくりを抱き上げて、鍵を占めた後は靴を脱いでリビングへと歩き出す。部屋はひとり暮らしの女性にしては広くて部屋数も多く、物欲が少ない彼女では使えていない部屋もあった。
「ゆっぴ、おいで」
着替え終わり手を広げれば嬉しそうに胸元へと飛び込んでくれるゆっぴ。ゆっくりでぴっ、と鳴くからゆっぴなんて単純だけど、そんなことはどうだっていいのだ。
「ん〜〜!可愛いなぁ〜!」
ぎゅっと抱き締めればぴっぴっとちょっと苦しそうな声。だけどそれすらも可愛くてまた強く抱きしめてしまう。
「ぴ〜〜!ぴぃ〜!」
「あぁ、ごめんね」
けど流石に苦しいのか悲痛に叫ぶゆっぴに罪悪感を感じて抱きしめていた力を緩めた。
「ぴっ」
仕方ない、なんて言わんばかりに鳴くゆっぴ。他のゆっくりとは違ってぴっと鳴くこの子だが、とてもゆっくりとは思えないほど賢い。贔屓目ももちろんあるけど、注意すれば次からはしなくなるからやっぱり賢いと思う。
「ぴ、ぴぃ〜」
グリグリと私の首元に顔をうずめる。顔しかないとかは言ってはいけない。
「あっ、ちょっと。くすぐったいよ」
顔をうずめたまま、ぺろりと舐められたのかくすぐったくて体が震える。たまにこの子はこういう時があるのだが、犬や猫が舐めるのと大差ないだろう。気にするほどでもない。
「さぁ〜て、ご飯ご飯……あ、良かった!スイッチちゃんと入れてたんだ」
ゆっぴを抱きかかえたまま炊飯器を見れば炊飯のマークが出ている。今日は忙しかったからつけるの忘れていた気がするんだけど、ちゃんとついていたようで良かった。
今まではこんな小さなミスがよくあったが、それも最近ではミスが減った。ご飯を食べるのが遅くなったりお風呂があふれるなんてこともなくなったのは大きな成長だと思う。
「ん…?そういえばゆっぴから来てからかも」
「ぴ?」
名前が呼ばれたからか、こちらを見るゆっぴ。可愛い。
「ううん、何でもないよ。ご飯にしようか」
緩む頬を隠す気もなくおかずを用意すべくキッチンに行った。
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夜有(プロフ) - 百瀬のえるさん» ありがとう御座います!いつかまた会えるときが来ましたら、そのときはよろしくお願いします。 (2021年1月1日 23時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬のえる(プロフ) - 更新ありがとうございました!大好きです!!お疲れ様でした! (2021年1月1日 23時) (レス) id: 90299a5c54 (このIDを非表示/違反報告)
黒音 - はい!それではお願いします! (2019年10月15日 16時) (携帯から) (レス) id: 11da0246b8 (このIDを非表示/違反報告)
夜有(プロフ) - 黒音さん» あ、いえ!その可能性も考えてたのにそこも確認してなかった私もすみませんでした。リクエスト承りました! (2019年10月15日 16時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
黒音 - 返信ありがとうございます!個人的にはハッピーエンドがいいですが作者さんの書きやすい方で良いですよ(それと夢主が死んだ後の事なのですが前世の時の事です。分かりづらくてすみませんでした) (2019年10月15日 16時) (携帯から) (レス) id: 11da0246b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜有 | 作成日時:2019年4月7日 22時