°闇を潜ったラガッツォ*【派生作品】 (ページ10)

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電車が到着し、家まで歩いて帰ってきたものはいいが、家の門の前で立ちすくんでしまった。
早く行かなくてはいけないのに……一歩を踏み出せと京夜は自分を急かした。

約5分ほど後、ようやく手で門を押し開ける。家に入ると、京夜の「ただいま」という弱々しい声が響いた後、母親がやって来た。

「おかえり、京夜。…早く勉強を始めなさい」

「おかえり」と言ってくれたものの、相変わらず声は冷たかった。もう慣れたことだが、「慣れた」と済ませてしまう自分が何より恐ろしかった。

京夜は逃げ込むようにして自分の部屋へ入った。昔の京夜だったら、ありとあらゆるところに書物が山積みになった部屋を見たら一瞬で吐き気でもしてしまいそうだ。今はどうだってことは無いが。

鞄を収納し、参考書を広げると次のテストに向けて勉強を始めた。
どうしても勉強をしている時間が長く感じられた。早く終わってくれないものかと、窓の外を眺めた。
しかし、どこから目や耳がついているかわからない。京夜は素早く勉強を再開した。

勉強を続けて1時間は経っただろうか。窓の外を再び眺めると、始める前に比べて大分暗くなっていた。
平日なのでそろそろ勉強を終わりにしたかったが、何か言われたら困ると思った京夜は待ってみることにした。

何分後か、扉の外から「夕食が出来たから食べなさい」という母親の声が聞こえた。優しい言葉のように聞こえるが、声はいつものように冷たいままだった。勉強を中断出来ることは、京夜にとってはとても嬉しいことだった。

椅子から立ち上がり、夕食を食べに向かった。

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夕食が相変わらず会話が無かった。食器の音がカタカタと聞こえるだけで、一言も。

部屋に戻って一息つく。丁度いい柔らかさのベットに倒れ込み、目を瞑った。
そのまましばらく倒れていると、色々な考えが頭の中をよぎる。

いつになったら自分はこの生活から解放されるのだろうか。

1日でも早く、1秒でも早く、解放されますように。

そう願って、京夜は再び椅子に腰をかけて勉強を始めた。