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はじめ side


ファン達をなんとか振り切り、車の中で一息つく。

すぐに携帯を取り出し、Aさんに連絡……と思ったが、そういえば携帯持ってなかったな。


は「やらかした……」


車の中で頭を抱える。

迎えに行ったらきっと俺を探しているファンに遭遇して、次こそ逃してもらえないだろう。

でもAさんを1人にして逃げるなんてできない……!


やむおえない!とドアを開けようとすると助手席にAさんが座った。


「大変でしたね、大丈夫です?」


ああ、なんて賢いんだ。

と、安心して涙ぐみながら「大丈夫」と答えた。


は「置いていってしまってごめん」

「行く前にちゃんと説明してくれたので大丈夫ですよ」

は「下着は、買えた?」

「買いましたよ」

は「俺はもう、中には行けないけど他に買うものは?」

「んー特には!」


帰ろう、ということになりHAPまで車を走らせようと思ったが、置いていったことに申し訳なさを感じよく行く個室のある、パンケーキ屋さんに向かった。


「美味しそう!」


1番人気のいちごもりもりパンケーキを頼み、運ばれてくるとAさんは目を輝かせた。


は「甘いもの好き?」

「大好きですっ、ずっと食べてみたかった……!」

は「先にどうぞ」


あぁ……パンケーキになりてぇ、と思いながらAさんの顔を見る。


「ん〜っ……!」


口にホイップクリームをつけて、涙を流しながら食べる女性はなかなかいないと思う。

俺はアウトローなのか?


は「付いてるよ」


俺は手を伸ばし、Aさんの口についているホイップクリームを掬い上げて自分の口に運ぶ。


「……あ、ありがとうございます」

は「ゆっくり食べていいからね」

「はいっ、味わって食べさせていただきます!」


確かにこの店のパンケーキを食べると幸せな気分になるが、いつもの違う、

ナイフでパンケーキを切りながら考えた結果。


は(……好きなんだ、俺)


自分の気持ちに嘘つくのはやめた。

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作品ジャンル:恋愛
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作者名:999 | 作成日時:2019年6月4日 2時

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