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A side
悪い夢だった。
家を出た時に、父親にビンタをされたのだ。
『お父さん、だれ、その人』
父『お前の新しいお母さんだ』
『私、家出る』
父『どうしてだ、新しいお母さんが気に食わないのか?』
『お母さんに"お前しか愛さない"って言ってたじゃん』
父『うるさい、お前に何が分かるってんだ!』
……。
お父さんはあの女性を連れてきてから、変わった。
私のことを第1に考えていて、私のことは一切考えず、亡くなったお母さんに朝毎日お線香をあげていたのが、あげなくなった。
女『貴方、いつまで子供でいるつもり?さっさと出て行きなさいよ』
許せなかった。
『あんたなんて大っ嫌い』
嘘泣きをして父に縋り付いた、あの女を許さない。
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「んぐ」
は「起きた……?A、大丈夫?」
「え?あぁ、うん……」
すごい心配な顔で、はじめさんが私の顔を覗き込んでいた。
は「熱測って。食欲ある?」
「まぁ……」
現実的な夢すぎて、ほわほわする。
は「あら、38.5℃……あんまり変わらないね」
はじめさんがインスタントのお粥を、温めて持ってきてくれた。
は「すごい魘されてたんよ」
「怖い夢を見ちゃって」
は「そっかそっか、それは怖かったなぁ」
はじめさんは私の頭を優しく撫でた。
はじめさんは優しい。
彼の優しさに甘えたいと思う自分もいる。
でもそれはすぐになくなってしまうかもしれない。
は「はい、まだ熱いと思うけど……」
「はい、大丈夫です」
インスタントお粥を受け取ると
は「ごめんこれからメインの撮影でしなきゃいけなくえ、1回部屋離れるけどなにかあったらすぐ呼んで」
「ありがとうございます、メインの撮影頑張ってくださいっ」
エールを送ると「おうっ」とはじめさんが返事をした。
お粥には私が苦手な梅干しが載っていた。
梅干しは健康にいいから、多分入れてくれたのだろう。
「……私も、頑張ろう」
何年ぶりに食べた梅干しは、甘酸っぱくて美味しかった。
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作者名:999 | 作成日時:2019年6月4日 2時