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廉「先生落ち着いて、?」
廉くんが私の背中を優しくさすってくれる。
そのまま近くにあった石に腰掛けた。
『ごめん、怒ったりなんかして・・』
廉「ううん、そりゃみんな心配するもん。先生は間違ってなんかないよ、?」
わたしの背中をまださすり続けてくれる君・・
乱れた呼吸は少しずつ、廉くんのおかげで整った。
『ありがとね、もう大丈夫だよ?』
冷たい川に入ったんだから、本当は寒くて、早く着替えたいだろうに・・
私なんかの為に、こんなに必死に向き合ってくれる。
この癒えない傷も、廉くんに言ってみたら何か変わるのかな、って・・
わたしは初めて、あの出来事を人に言った。
『・・わたしね、高校生のとき、付き合ってる彼氏がいたの』
静かに、でも私の目をまっすぐ見て聞いてくれる君はとても熱い人。そう思った。
『ちょうど、今の廉くんぐらいの時かな、卒業間近でみんなでキャンプに行ったの』
今でも、考える。
あの時、キャンプなんかに行ってなかったら、優太は死ななかったのに・・って。
『ちょうどね、今日みたいな事があったの。小学生の男の子が溺れてて・・』
今でも鮮明に覚えている。
助けて助けてって男の子は叫んでるのに、周りにいる大人はみんな見て見ぬふり。
そんな中で一人だけ、川に向かっていったのが・・そう、優太だった。
『彼はその子を助けにいったの・・すぐにレスキュー隊がきて男の子は助かったんだけど』
あれを思い出す度、頭の奥がズキズキと痛みを増す。
廉くんは心を乱さず、ずっと聞いてくれていた。
『川の流れは強さを増して・・優太だけッ、そのまま流されてってッ』
やっと落ち着いたはずなのに、またこみあがってくるその涙。
それは、何度出たって枯れることはないだろう。
廉「もうええよッもう言わんくて」
再び廉くんは私の背中をさすってくれた。
優太はすぐに見つからなかった。
次の日の朝、発見されたのは・・
目を瞑ったまま、冷えきった私の知らない優太だった。
そう、溺死だったんだ。
優太は、小さな男の子を助けて・・
18歳でこの世を去った。
あまりにも綺麗すぎる死因だと思った。
そんなカッコいい死に方されて、残されたわたしはいつも何を待っているのか・・
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美久(プロフ) - こんばんは、岸くんの作品探していたところ見つけて読ませていただきました!もう素敵なお話で大号泣です、、他の作品も読ませていただきます! (2022年9月22日 0時) (レス) id: b3cc7c76d7 (このIDを非表示/違反報告)
リーダー(仮) - めちゃくちゃ久しぶりに泣きました。 番外編も、読んでみたいです。 (2021年12月5日 0時) (レス) @page50 id: 6f32c3f285 (このIDを非表示/違反報告)
七奈(プロフ) - はじめまして。コメント失礼します。思わず涙が溢れました、、、苦しくて切なくて、だけどどこかあたたかさにも包まれていて、、、素敵なお話をありがとうございました!これからも作者さんのこと応援させてください。 (2021年9月14日 0時) (レス) id: f58e70d40b (このIDを非表示/違反報告)
ange - 感動で涙が溢れました。素敵なお話をありがとうございました。そしてこちらの作品に出会えたこと嬉しく思います。これからも作者様のお話を楽しみにしております。 (2021年8月23日 0時) (レス) id: 7b959df396 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 今まで見てきた占ツクの中で1番感動しました。もしよろしければ、岸くんと結ばれたお話や続編も見たいです。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 11c222fc20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:muhe | 作成日時:2018年5月21日 23時