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家の少し前で廉くんに別れを告げ、わたしはひとりで家の中へと入ってきた。
『ただいま』
いつもなら言わないこの言葉も今日は、勇気を持って言えた。
岸「おかえりー!!」
玄関の方に出てくることもなく、ただリビングから聞こえる叫び声。
これ、私にしか聞こえないからいいけど・・
普通だったらかなりの苦情ものだよ。
引き戸を開けて中に入ると・・
岸「おつかれ!」
私が毎月買っているファッション雑誌をペラペラめくりながら、ほんと暇してたんだね。
そこでふと気付いた。
・・なんかお腹がもっと空くような、いい匂い。
岸「冷蔵庫にあるもんで飯作っといた!」
『そんな事まで出来るの?』
岸「まぁな!」
そこまでやってくれると、現実に背を向けたまま・・
わたしは受け止めることがもっと出来なくなる。
岸「着替えな?用意しといてやるから!」
カーペットの上で横になり、ゴロゴロしてた優太は、弾みのある感じで立ち上がった。
とりあえず着替え、小さなテーブルの前に座る。
岸「ほいっ」
出てきたのは野菜炒めと生姜焼き。
『いただきます』
岸「おうっ」
一口食べたあと、美味しいと彼に伝えたけど・・多分、気付いてるよね?
私が普通じゃないこと・・気付いてて様子見てるよね?
ちょっと構って欲しくて、わたしは食べる手を止め、彼を見た。
岸「ん?」
『別に、』
自分から何かを言うわけでもなく、ただただ優太を見る。
岸「慰めてやろっか?」
ほら、やっぱり。
何故かわかんないけど、知ってる気がした。
『・・いい』
岸「なんでだよッ!」
私が拗ねると優太も拗ねだした。
『優太にそんな事されてもムカつく。死人なくせに』
岸「お前これからそれとことん理由にしてったらキリねぇぞ?」
確かに・・そうだけど。
岸「廉くんの事だってそうだろ?ひとりの男として見てやれよ」
ひとりの男の子として見たって、私の気持ちは晴れることはない。
余計に悩み苦しむでしょ、?
それを優太はちゃんと分かってる?
『もう、よく分かんないよ』
岸「もうすぐ分かるって!」
優太は何を知ってるの?
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美久(プロフ) - こんばんは、岸くんの作品探していたところ見つけて読ませていただきました!もう素敵なお話で大号泣です、、他の作品も読ませていただきます! (2022年9月22日 0時) (レス) id: b3cc7c76d7 (このIDを非表示/違反報告)
リーダー(仮) - めちゃくちゃ久しぶりに泣きました。 番外編も、読んでみたいです。 (2021年12月5日 0時) (レス) @page50 id: 6f32c3f285 (このIDを非表示/違反報告)
七奈(プロフ) - はじめまして。コメント失礼します。思わず涙が溢れました、、、苦しくて切なくて、だけどどこかあたたかさにも包まれていて、、、素敵なお話をありがとうございました!これからも作者さんのこと応援させてください。 (2021年9月14日 0時) (レス) id: f58e70d40b (このIDを非表示/違反報告)
ange - 感動で涙が溢れました。素敵なお話をありがとうございました。そしてこちらの作品に出会えたこと嬉しく思います。これからも作者様のお話を楽しみにしております。 (2021年8月23日 0時) (レス) id: 7b959df396 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 今まで見てきた占ツクの中で1番感動しました。もしよろしければ、岸くんと結ばれたお話や続編も見たいです。 (2021年5月28日 14時) (レス) id: 11c222fc20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:muhe | 作成日時:2018年5月21日 23時