ペアルック ~Ren.Nagase~

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力の抜けた彼をどけて、私はベンチに起き上がった。







『なにそれ･･言いたいことだけ言ってなんも伝わってないしッ！！何も分かんないんだけどッ！！』







何か言って欲しくて、私は私らしく彼にガミガミ
ぶち当たる。







避けられたその目を私から合わせにいくけれど･･







その前髪に隠れた瞳はずっと下を見つめていて







嫌いになればええやん、って･･







廉は本気で思っているのだろうか。







･･だとしたら私は、







とんでもない勘違いをしていたのかもしれない。







『もう知らないッッ廉なんて大っ嫌いッ！！、』







私はそれだけを言い放って公園から逃げ出した。







履き慣れていないサンダルは、コンクリートに擦れる音を響かせる。








何も聞こえてこない背中にただ胸が苦しくなった。







どこかでちょっと、呼び止めてくれるその声を待っていたのだ。








だけど、それは聞こえない。









廉の飛び止める声は、聞こえてこない･･









足の力が急に抜けて、その場に立ち止まる。









『何やってんだろッ私･･、、』









廉のことを分かってあげれなければ、








自分のことを分かってもらおうともしなかった。








ただただお互いに言いたいことだけ言って、








どうしたいか、どうして欲しいかは言わないで･･









こんなんじゃ何をどう頑張っても、時間は無駄に経つだけだ。









人はテレパシーなんて器用な能力を持っちゃいない。








だから、言わないと分からないんだ。









どんなにずっと一緒にいる家族だって、








誰よりも信頼している仲の親友だって･･








どんなに愛し合ってる恋人だって、、









大事なことは、ちゃんと言葉にして言わないと･･







直接、言葉で伝えないと通じないんだ。








『もう･･嫌だッ、』








頭を抱えて状況を整理しても何も落ち着くことなんてない。







永遠と出てくるその涙に答えを出そうと努力をしても出てくるのは悲しみと後悔だけ、。








そんな時、ハスキーな声が上から降ってきたのだ。







紫「A、ちゃん？」







顔をあげれば、ぐちゃぐちゃな私の顔を見て彼はあたふたし出す。








紫「えッ･･どうしたん？」







しゃがみ込んで私の目線に合わせてくれると








紫「大丈夫やで、一旦落ち着き？」







背中を優しく摩ってくれた。

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