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食べ物や衣服など、その他生きることに必要なものが十分に与えられない日々が続く。ネグレクトに近い…いやネグレクトと言い切ってもいい状態だった。不幸中の幸いか、暴力を振られたことはなかったが二人はどうしてか畠の「目」を嫌い、見るたびに機嫌を損ね罵倒した。「あいつと同じ色の目でこっちを見るな。気持ち悪い、汚い目で」「こっち見ないでよ。あの人と目つきがそっくりで気にくわないの。ほんっと大嫌い」
言われ続ける内に畠は目を隠すようになった。
ある日、どうしても空腹に耐えられなくなって、畠は盗みに手を染めた。
犯罪だった。見つかればタダでは済まないということはわかっていた。しかしどうしても腹を満たしたかった。
するとその才能があったのか、誰にもバレることなくやり通すことが出来た。味を占めた畠が腹が空くたびにそれを繰り返していると、そのうち両親にバレた。そして言われたのは「俺たちの分も盗んで来い」という言葉で。いつのまにか畠は食料だけでなく、酒や煙草、化粧品などを盗むことも強要されるようになっていた。
立派な犯罪者となった畠に、ついに罰が下る。
十五歳になった頃起こったそれは、あまりにも突然だった。
ふらふらと街を歩いていた畠の腕を骨が軋むほどの強さで誰かが掴み、そのまま路地裏に引っ張ったのだ。相手は二人だった。薄暗く汚れた悪臭の漂う路地裏で、相手は掴んだ手をそのままコンクリートの壁に向けて投げつけた。当然畠は壁に全身を打ち付け、そのまま息苦しそうに崩れ落ちた。
人間とは思えないほどの圧倒的な力だった。勝てるなんて思えない、死を覚悟してしまうほどの強大な力。都合のいい標的を探していた二人に残念ながら選ばれてしまった畠は、その二人に、長時間暴行を加えられ、痛めつけられることになった。殴られ、蹴られ、抑えつけられ……血を流し意識も朦朧としながら、このまま死ぬのかと考えていた畠を救ったのは、組織の研究者たちだった。
病院で治療された畠に告げられたのは、畠に暴力を振るった男二人は、ラボから抜け出した主人のいないアルマだったという事実。これは全面的に自分たちが悪かったと、謝罪と共に慰謝料として多額の金を払うと言った。その代わりこのことは誰にも口外しないでくれと。
畠はまともな思考が働かないまま、虚ろな目のままその提案を受け入れた。
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