君の他には何にもいらないよ

ホットミルク・ナイトコール ybin ページ32

高校生
不眠ないのおくんといのおくんが好きなやぶくん
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「…おお、いのお」
いつもより、呂律の回ってない、電話越しの声。
なんだよ寝起きかよ、って、相手には見えない俺の顔が歪んだ。



目を閉じても、眠りには落ちない。
夜、眠ることが億劫にさえなっていた。

いつから、なんて覚えていない。
夢なんて、もういつ見たか覚えてない。

ベッドの上で、布団を被ってお山座り。
今日は晴れてるみたいで月が綺麗。満月だ。
そんなものに集中していれば、どうやったっていつも通り朝がくる。



「また寝不足か」
顔を合わせるなり、呆れたように溜息をつかれた。

昼休みの教室。残り時間は20分。
せっかく気を遣って、一緒に飯を食ってたたかぎがそっとしておいてくれてたのに。

昼にやってくる逃げられない眠気に大人しく従ってた俺を、薮が横から邪魔をする。
やぶちゃん、って、ほら、大ちゃんも言ってるじゃん。

ほっといて、授業ではちゃんと起きてるんだから文句ないだろ。

体を伏せたまんま、聞こえないふり。
無言の抵抗。

そのまま寝てやろうと思ったけど、一度邪魔されたら上手く眠ることが出来なくて、とうとう予鈴が鳴った。

頭に霞がかかったまま、無理やり体を起こす。
大ちゃんとたかぎが、ふらつく俺を支える横で、光に叩かれた薮の悲鳴が聞こえた。


結局、その後の授業も寝ることはなかったけど、ぼんやりした頭じゃなんにも考えられなくて、ただ座っているだけの無駄な時間にしてしまった。

頭が回らなくて、返事もままならない。

帰宅途中も、みんな俺が眠らないように話しかけてくれるけど、頭の中に言葉として入ってこないから、話の合間に、会話にもならない短い相槌を打つだけ。


そんなんだったから、今日は眠れるかなって思ってたけど。
やっぱりそう上手くはいかない。目が冴えて清々しいくらいだ。

仕方がないから、今日もベッドにお山座り。
晴れ続きで、月が明るい。
明るすぎて星が見えないのはちょっと残念だけど。

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