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音を立てないように鍵を開けて、部屋の中に入る。
ドキドキしながらリビングを覗くけど、

いのちゃんは見当たらなかった。

靴はあったし、どこかに出かけているわけではなさそう。
シャワーの音もしないから、お風呂でもないな。

考えながらリビングを見渡すと、今日彼が持っていたクラッチバッグが床に投げられたまま。
それを辿って目線をあげると、ドアが半開きの寝室。


え、もしかしてもう寝ちゃったの?

疲れてたのかな、って、ドアを開いて中を覗いた。


「、いの、ちゃん?」


いつかのくまを抱きしめて、枕に顔を埋めたいのちゃんがいた。
かろうじて靴下は脱いであるけど、アウターは着たまま。

ぱったり充電が切れたみたいに、動かない。

心配になって、寝室に足を踏み入れて、顔の見えないいのちゃんの頭をなでる。
急なことに驚いたのか、大袈裟なほど肩を震わせて、俺の方を振り返った。

目があったのは一瞬で、またテディベアで顔を隠して、俺のいる側とは反対の方へ逃げて行く。
すん、って鼻をすする音がして、泣いてるのが隠せていない。

いのちゃんは、なんにも喋らない。



俺はわかってしまった。

このかわいいテディベアが、いのちゃんのセキュリティブランケットだってこと。

きっと小さい頃から一緒なんだろうな。
この子がずっと、いのちゃんを不安から守ってきたんだろうな。

「この子に名前はあるの?」

ベッドに身を乗り出して、ぎゅっと抱き締められているくまの頭を撫でた。


「…なさけない、って、おもわないの?」

こんなのにたよってるなんて。

やっと、くまの向こうから、篭った声が聞こえてくる。
確かにそれに安心したんだけど、
なんだか本当にくまが喋ってるみたいで、笑ってしまった。

「なんでわらうの…」


ばかだないのちゃん!

「そんなのかわいいだけだよ!」



いのちゃんは案外お馬鹿だから。

いっつも1人で考え込んで、1人で解決できちゃうんだけど、いっつもそのストレスにやられちゃう。

こうやって、ぎゅっとテディベアを抱きしめて、そのまま眠りに逃げて行く。

それで安心できるなら、いいんじゃないかな。
かわいいし、俺も目の保養になるし。

でも。でもね、いのちゃん。

俺もいるってこと、忘れないでね。




くまよりも頼り甲斐のある、恋人になってみせるからね。

(終)

ホットミルク・ナイトコール ybin→←君はライナス ytin



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かじ(プロフ) - 佐々木さん» コメントありがとうございます。とっても嬉しいです。拙い文ですが、楽しんで読んでもらえたら幸いです。 (2018年7月5日 0時) (レス) id: cc9d60b609 (このIDを非表示/違反報告)
佐々木 - すぺてのお話がキュンキュンします。次のお話も楽しみにしています。 (2018年7月3日 21時) (レス) id: e2f78d2bae (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 特にことばにできないが大好きです!伊野尾くんが幼い感じのおはなし待ってますね、、、 (2018年6月27日 22時) (レス) id: fb58b76c4a (このIDを非表示/違反報告)
かじ(プロフ) - 琳さん» はじめまして。ご丁寧に感想をありがとうございます。恐縮です。拙い文ですがこれからも読んでいただけると嬉しいです^ - ^ (2018年6月27日 22時) (レス) id: 76a26e19db (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - かじさんはじめまして!いつも楽しく読ませてもらってます!!すごく大好きなお話ばかりで更新が楽しみで仕方ないです(*´∀`*)これからも頑張ってください! (2018年6月27日 21時) (レス) id: fb58b76c4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かじ | 作成日時:2018年6月17日 23時

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