君の他には何にもいらないよ

ねえ、先輩 ytin ページ25

続き
どうしてもハッピーエンドにしたかった
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「いのお先輩」

振り返った貴方はぐずぐずで、やけに小さく見えた。


華奢な肩、気怠げな仕草。
制服の袖から覗くカーディガンが、綺麗な手を覆っていて、その手には、卒業証書。

どうしたって最後なんだって、突きつけられるみたいで悔しかった。



いつも隠れて見てた。

毎朝、登校時刻の昇降口で見つからないように待ち伏せして。
年上でクールビューティーな貴方が、友達と笑い合うのを見つめるのが日課だった。

でもそれも、今日が終わって明日が来たら、見られなくなっちゃう。

卒業の日。
桜の木の下で、やっぱり見つからないように貴方のことを探した。

「ずっと好きでした」
って、かわいい女の先輩から告白されても、最後だって勇気を出してくれたのもわかるけど、あの人じゃなきゃやっぱりだめで、ごめんなさいを告げた。

目の端にはずっと貴方を捉えていた。

何故か急に驚いた顔をして、俯いて、同じクラスの輪からそっと抜け出してしまう。
校舎の方へ向かう貴方の背中が、いつもより頼りなさげに見えた。

追いかけたいけど、俺と貴方の間には何のつながりもないから。
歯がゆくて、そっとため息をつく。

「ゆうてぃー、」

追いかけなくていいの？、って、俺の気持ちをよく知る知念が、そっと背中を支えてくれる。

「でも、」
「さっきの先輩みたいに、やりきって来なよ」


最後なんだから


「先輩は三階の空き教室だよ。宏太からのタレコミ。」


聞いたときにはもう、駆け出していた。

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