君の他には何にもいらないよ

迷惑客にご注意を ymin ページ18

ymin ノンリアル
王子様系やまだくんとお口の悪いいのおくんとモブ
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やけに疲れたバイトから、やっと部屋へと帰り着いた。
おかえり、って眠そうな恋人の声が聞こえてきて、ようやくほっと息を吐く。

何かあったの？、と割に鈍ちんな山田にも気にされるから、俺の顔は相当死んでいるらしい。
心配させないように、ちょっとミスしちゃった、って平気な風に嘘をついた。

流石に言えない。

大学生だし、って始めた夕方からのスーパーのアルバイトで、同性の客からナンパされているなんて。


初めはそんなに気にしていなかった。

とは言っても、なんか凄く近くに変な男が立ってるな、と気付いてはいたし、チラチラと視線は感じるし。
極め付けに、ぼそぼそ喋ってる独り言の中に、かわいい…、なんて呟きが聞こえたから、マジでヤバい客らしい、ということは充分わかっていた。

でもこの場所の品出し作業がまだ終わってないから、持ち場を離れるわけにもいかないし。

ああでもやっぱり無理だ、キモすぎる。
ここは後回しにして、一旦距離を取ろうと、背中をむけようとした時だった。

「あの」

あ〜〜〜〜〜〜これ無視できないやつだ〜〜〜！！めんどくせぇ〜〜〜〜！

側から見れば、店員に声をかけた客、という余りにも自然なシチュエーションだ。
聞こえないふりをする方が不審に思われる。

仕方ない。
この手の客の接客は物凄く苦手だけど、仕方がない。
腹を決めて、そいつの方へ振り返る。


ビジュアルもまあまあ悪いじゃねえか。調子乗ったアホみたいなツラしやがって。


「はい、商品案内ですかぁ？」

絶対違うってわかってるけど一応すっとぼけておこう。
上背だけはあるみたいで、目を合わせれば必然と俺が上目遣いになる。
そいつの顔が火のついたように赤くなった。

あー、俺の顔が可愛くてすみませんね。

「ひぇ、あ、あの、ずっと前から、お話ししてみたいと、思ってて！」

学生さんですか？なんて問いに優しく肯定してしまったのが不味かったらしい。
典型的、というには余りにも挙動が怪しかったけど。いつのまにか、どこ住み？ラインやってる？攻撃が始まっていた。

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