90 二人だけの輝き ページ43
全力で走り出す。神葉くんがいるってことは、葵もいるんじゃ…
「待ってくれ！」
慣れない服装のせいで私は転びそうになる。神葉くんの個性。大きな葉っぱが転びそうになった私を支えた。
「葵はいねェ。俺は今日高校の友達と来てる。だから、待ってくれ…」
『待たせている人がいるの…』
その言葉を聞いた神葉くんは驚いた。
「葵に何かされてんだろ。俺のせいだ…ずっと謝りたかった。」
違う。神葉くんは悪くない。でも…言葉が出ない。ここから早く逃げたい。
「時間がかかってもいい。だから___」
「オイ。Aが嫌がってんのが分かんねェのか。」
「確か体育祭一位だった…」
「遅れるぞ。早く来やがれ。」
神葉くんは焦った様子で爆豪くんに問いかける。
「Aの彼氏か…？」
「…まだ違ェ」
付き合う前提なのね。…神葉くん、まだ私のことを好きでいてくれたようだ。
爆豪くんに連れていかれ、私はもう一度人混みの中に入る。強い力で押されて爆豪くんと離れそうになる。
「掴んでろ。」
『っ…』
爆豪くんの服の裾をギュッと掴む。道が見えると爆豪くんは立ち止まって私を見た。
『爆豪く…』
「アイツなんかより俺にしろや…」
珍しく不安な顔をしている爆豪くん。神葉くんを見てしまったからだろう。
「アイツ何かより…俺の方がAのこと好きだわ…」
爆豪くんは…全部…一人で抱え込む人なのかな。何だか今の顔を見てそう思った。抱え込む辛さを、私はよく知っている。爆豪くんにはそんなふうに思って欲しくない。私をたくさん助けてくれた。何度も何度も。
『大丈夫。私が今見ているの、爆豪くんだけだから。』
「まもなく花火大会を開催致します。」
『もう始まっちゃう。行こう？』
何故か固まっている爆豪くんの手を握るとその瞬間。大きな音。始めの花火が上がったのかな。そう考えて見上げた空。
"花火の中で一回だけハート型の花火が上がるんだよ！その時一緒に触れ合っていた男女は将来幸せになるんだって！"
「今年は最初かー」
「もう！ゆーくんと見たかったのに。」
周りの人の声が聞こえてくる。その時には夜空に浮かんだ大きな輝きはパラパラと消えていた。
私はその手を離さなかった。爆豪くんは色々な感情が混ざり合い、珍しい顔をしている。
「行くぞ…」
手には爆豪くんから貰ったブレスレットが輝いてる。夜空にはまだまだたくさんの花火が輝く。
二人の輝きは消える事はない___
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作者名：ゆゆん | 作成日時：2019年3月15日 18時
