舞台5 ページ5
Aは話した後誰も居なくなったロビーに向かって歩いて行った。
景吾は見失わないように追おうとした。そこに居る白石に気づいていないというような顔をして。
しかし、白石は景吾の気持ちなどお構い無しに声をかけてきた。仕方なく今初めて気がついたという振りをして「白石じゃねーの、久しぶりだな」と言葉を交わす。
ほら、横の女も困ってるだろ。俺に構ってくるんじゃねぇ
Aがこちらに戻ってくることに淡い期待を抱きながら景吾は白石と会話をつづける。
流石関西人と言うべきか、話が途絶える様子も見えない。それにAが戻ってくる気配もない。
隙を見て白石の妹が話を切り上げてくれたおかげで景吾はその場を離れることが出来た。
Aと話すイメージトレーニングは万全だ。
心の中で勝者の笑みを浮かべながら景吾は偶然を装ってロビーに足を踏み入れる。
薄暗いロビーの中でフラワースタンドに手を伸ばす彼女は絵画のようだった。
声をかけるのも勿体ないような気もしたが、景吾は意を決して話しかけた。
「そこで何をしている」
花を1輪抜いた彼女の方がビクリと跳ねる。
やらかした、と景吾は直感的に感じた。もっと他に言い方があっただろうと自分でも焦っていた。
「何って…花、貰ってただけです。知人が折角送ってくれたものなので」
ゆっくりと振り返りながらAは淡々とそう告げ、冷たい笑みを浮べ、景吾の横を通り過ぎた。
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作者名:あやめ | 作成日時:2019年1月15日 18時