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それにしても、かなり唐突な再開である。しかし会話をする前に室内に入りたい。このままでは風に飛ばされてしまう……。
私が目で訴えていると、魈様はため息をつき、ついて来いと言わんばかりに踵を返した。もちろん慌てて着いていく。
ようやく室内に到着。というか鉱石が重い。どっこしょ、と老人も真っ青なしわがれた声で背負っていた籠を下ろす。いや……肩が凝って困るのだが……。
「長旅疲れただろう、我が代わりにヴェル・ゴレットに話を通す。要件を手短に言え」
「あ……恐縮です。一晩泊めていただきたいのですが、安くしていただけませんかと」
「わかった。任せておけ」
そう言って魈様はオーナー殿と話をしに行った。いや……頼もしい限りなのだが、大丈夫なのか……? だってあの方仙人だろ、しかもずっと戦ってばかりいらっしゃるし……。いや、私が言えたことでもないな。頭を振って考えるのをやめた。
夜泊石でも見て気分を落ち着かせていると、魈様がお戻りになられた。
「一晩なら1000モラで構わぬと言っておったぞ」
「1000モラ!? 桁をひとつ間違えておられませんか!?」
「我が聞き間違えたとでも言うのか? 貴様、どの分際で……」
「いえ、魈様の耳を疑っているわけではございません! ですがここは”あの”望舒旅館です、1000モラは……ちょ、安すぎます……」
「だが安くしろと言ったのは貴様だ」
いやそこまでとは言ってねぇ! 声帯を飛び出そうになったのを何とか堪えた。望舒旅館を1000モラは流石に安すぎる。世間知らずな私でも詐欺を疑う。これは本音だ。
しかし、実際私は確かに安くしてくれと頼んだ。いや……1000モラだろ……? 望舒旅館、一晩1000モラ……?
あまりにも信じられなくて魈様のお顔を見つめていると、彼がため息をついた。いやすみません、本当に……。
「そんなに疑うのなら、ヴェル・ゴレットに確認をとれ。我は嘘など言っていないぞ」
「……は、はい……」
するわ。確認する。この破格、詐欺ではないか? オーナー殿に確認をしたが、間違いないと返された。ついでにこんなことも言ってきた。
「魈様はウチのお得意様なんです。彼の身内ともなれば、破格で1部屋提供しますよ」
「いや……正気ですか……?」
「えぇ、なんて言ったって、彼は”護法夜叉”ですから」
そうなんだけどな? そうだけど違うんだよ。1000モラは安すぎるって言ってるの! 私は!
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