【Genshin】ならばあなたと生きましょう (ページ6)

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父から情勢を聞いてからというもの、城下町の話の話題はそれ一色に染った。
将軍のお膝元である城下町では、幕府軍を称えたり、応援したりする声ばかり聞こえた。仕方の無いことだ、下手に抵抗軍を支持した会話が天領奉行の耳にでも入れば、ただじゃ済まされないだろう。

最悪、命を落とすかもしれない。

だから城下町では幕府軍しか支持しない。たとえ神の目を奪われていたとしても、命よりも大切なものは無い。神の目を取り返せたとて、そのとき命が尽きてしまえば元も子もないのだから。

「……抵抗軍の皆様も、お気の毒ですわね」

「あら、A様もそう思われます？私も同意見ですわ。だって庶民の分際で幕府軍に勝とうだなんて、ねぇ」

適用に言った私の言葉に同調したのは、天領奉行に務める父をお待ちのお嬢様だ。名前は覚えていない。
父上が誇らしくって仕方ないだろう。なにせ天領奉行なのだから。私の父も天領奉行に務めてはいるが、特に誇らしいと思ったことは無い。
それどころか憎くてたまらない。
彼と、彼の大切な人を傷つけたのだから。

私はお嬢様の話に適当に合わせ、適当なところで話をつけて帰宅する。帰りに彼に会えればいいけど、そんな夢は訪れない。仕方がないこと、だって寝てもいないんだもの。

今回の戦は名椎の浜付近で行われるらしい。城下町で過ごす我々には関係の無いことだ。

「……会いたい、ですよ」

帰り道にぽつり、呟いてみる。拙者もでござるよ、とどこからか返ってきてくれれば、幸せになれたのに。空想の中でしか聞けない彼の声は、もう肉声では聞けないのかしら。

「迎えに来てくれるんでしょう。落ち合う場所くらい教えてくれたって、いいじゃないですか」

周りに誰もいないのをいい事に、長めの独り言を言ってみる。
どうせなら、実家が離島近くであれば良かったのに。名椎の浜近くでも良かった、あそこに住宅が建てられるかは知らないけれど。
会いたい思いは日に日に強くなって、会えないとは言われたくなくて。彼を諦めることができずに、未だ独身を貫いているのだ。

「貴方の嫌いな暴言を言いますよ。あんまりにも長く待たせるから、気を引いてみたくなりました」

「かまわないでござるよ」

息が、心臓が止まった。あぁ、それから時が止まった気もした。
恋焦がれた声が聞こえた。風のように柔らかで、どこまでも澄んでいて通る声。
夢かと思って、しばらく振り返ることが出来なかった。