【Genshin】ならばあなたと生きましょう (ページ44)

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𝟏𝟒．ローレンシルムを追いかけて -- Tighnari ページ44

「ティナリ先輩！」

私は慣れない雨林の道を駆け抜けて、敬愛するその人の名を呼ぶ。
先輩は私を振り返ると、すこし困ったように微笑んだ。

「今日はどうしたんだい、A」
「研究に進捗が出たので、そのご報告に！あとは、またレンジャーの皆さんにサンプルの採集を依頼したく……」
「うん、要件は分かった。とりあえず、話が長くなりそうだから、僕の家においで」
「はい！」

知識が豊富で、研究熱心で、スメールの生態系を守っているティナリ先輩が大好きだ。人間としても、異性としても。私もこんな人になりたいと常々思う。
それにとてもかっこいいし、かわいい。こんな人がアビディアの森の案内人だなんて、初めて出会った人が恋に落ちてしまう。
先輩は私にハーブティを淹れてくれながら、会話を始める。

「雨林の調子はどうかな？」
「とても調子がいいです。元々死域だった所から採取したサンプルと、死域では無かった所から採取したサンプルでは、やはり差はありましたが……」
「だろうね。課題は山積みってところか……」

そう悩む仕草も様になって素敵です。私が好きそうだからと、わざわざ買ってくれた透明のティーセットを机に置きながら、私が知らない森のことを考えている。
自然は人間の手に負えない。心配も課題も不明点も常に山積み。生論派の研究対象は増えることしか知らないのだ。
私はもうひとつの紙束をバックから取り出して、先輩に続けて報告する。

「はい。また、先日の雷雨の影響もあり、一部地域で土壌の状態が悪くなっており、陥没している所も見られます。ただ、ビーコンの値から想定したものなので、直接確認しに行く必要はありそうです」

先輩が顔を顰めた。そりゃそうだ。魔鱗病が完治して、死域が増えなくなったと思ったら、今度は異常気象の季節になったから。雷が落ちて火事にならなければいいけど……。

「またか、最近多いよね。ただの雨ならいいのに、大雨とか雷雨とか異常気象ばっかり。調査するこっちの身にもなってほしいよ。生態系は大丈夫そうかな」
「ここに来るまでに見かけた動物たちは問題なさそうでしたよ！」
「なら良かった！」

安心させるように笑顔で言えば、先輩も嬉しそうに笑った。あぁ、その笑顔が可愛い。もう何もしても何を言っても、褒めるところしか見つかりません。