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……2、3時間たった頃だろうか。来ねぇじゃん。そりゃそうだよな。大人しく港町に帰ろうと踵を返した瞬間だった。
「……A?」
ふと、懐かしい声に呼び止められた。振り向けば、彼がいた。ずっとテイワットを飛び回っている彼に。未開の地でようやく会えた知り合いに、私は気が緩み涙が溢れてきた。
「……あや、っくす」
「ちょ、ちょっと泣かないでよ……!? あぁもう、なんで君がこんな危ないところにいるんだ! 聞きたいことは山ほどあるんだから……とりあえず一緒に来てもらうよ!」
彼はぷんすかとお母さんのように怒りながら私を抱き上げた。気の緩みからか、私は彼の腕の中で数秒も経たぬうちに意識を落としてしまった。
ふと、目が覚めると見知らぬ天井が目に入った。木組みの天井だった。私の部屋ではないことは、明白だ。
ふと横を見るとアヤックスがいた。はて、どうしてだろう……と思ったところで、記憶を取り戻す。そうだ、私はアヤックスに会いに来たんだった。
彼は私が目を覚ますなり、手に持っていた書類を机へ投げ、私の手を取った。
「A、怪我はないよね?」
「うん、してない」
「ならよかった。……さて、話してもらうよ。どうしてあんなに危険な場所に居たのか」
「うぅ、はい……」
明らかに怒った様子だが真剣な表情をする彼に逆らえない。滅多に怒らない彼のことだから、私のことを思ってのことなんだろうけど。そう思うとアヤックスに怒られるのも悪くないかもしれない。こんな表情をする彼を知っているのは、私だけなのかもしれないのだから。
私は大人しく、事の経緯を全て説明した。テウセルに情報を得て、璃月に"正規の"方法で訪れたこと。アヤックスに会えると、テウセルに教えてもらった通りの場所があの場所だったこと。
全てを話し終えると、真剣に話を聞いてくれていたアヤックスは大きなため息をついた。
「君……大人なんだから、あんな場所に俺が本当に来るなんて嘘だと思わなかったのかい?」
「でも、知らない街でアヤックスを探す方が迷子になりそうで……」
「あぁ、そうだった……Aは方向音痴だったね……。
いや、だからといって、あんな危険な場所にいなくたって良かっただろ? 俺が教えたから護身術程度は身についているとはいえ、魔物に襲われたら怪我をしかねないんだぞ」
「だって、アヤックスに会いたくて……」
「ぐっ……」
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