【Genshin】ならばあなたと生きましょう (ページ17)

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❺水鯨を訪れて--Tartaglia ページ17

今日も白が視界を埋め尽くす。どれだけ上に他の色を被せようと、全部白が上塗りしちゃう。白は何色にも染まるなんて嘘みたい。

私は、隣の家に住んでいた彼を思い出していた。同い年で、私よりも身長が少し高い男の子だった。運動神経がよくて、遊ぶ時はいつも私が負けていたっけ。お母さんに泣きながら勝敗を報告するのが日課だったな。

そういえば、顔も整っていたっけ。年上の友達が、彼のことを褒めていたような気がする。とってもかっこいいって……そんなの、側だけの感想なのに。私の方がもっとあの人のことをよく知ってる。褒めるところは顔以外にも沢山あるのに……。

5年ほど前に生まれた弟が遊びに出かける度に、私はアヤックスを思い出していた。私は幼少期を彼以外と遊んだことがなくて、ほかに思い出がないからだ。別に負かされるだけの嫌な思い出ばかりじゃない。プレゼントをくれることもあった。彼は自信家で負けず嫌いで、とても優しい人だった。

毎日、彼に会いたくなるのだ。おもちゃの販売員になって世界中を飛び回っている彼に。……アヤックスにおもちゃの販売員なんて、似合わないと思うけど。

そんなわけで、私はテウセルから話を聞いて、璃月にいるという情報を手に入れ、会いに行くことにした。といっても、璃月に行く方法など船以外にない。テウセルには悪いが、教えてもらった「船に乗り込む」作戦を実行せずに、正規の方法で船に乗り、璃月に向かうことにした。
……わざわざ危険なことをする大人はいない。つまりは、そういうことだ。

船に揺られ続け、体が揺れているのがデフォルトなのだと勘違いし始めた頃に目的地に到着した。暑い場所だ、最初の感想はそれだった。
その後はテウセルに言われた通り、どくがんぼうとやらを探した。港町から出たところにあるらしいが……はて、街を出れば魔物に出会わなかったか？まぁどうとでもなるだろう、護身術程度は身についているし。

しばらく歩いて、たしかにどくがんぼうらしきものを見つけた。めちゃくちゃデカい。座っているだけで私の身長よりもでかい……立ったら2倍ほどになるだろう。
このどくがんぼうを見つけたあたりにずっといると、アヤックスが迎えに来るのだとか……本当か？こんな辺鄙な場所に？ありえない、おもちゃの販売員の彼が……？
疑問は募るばかりだったが、これ以外に頼れる情報はない。素直に従うことにする。