赤と黒の糸 ページ12
妹 side
最近、お兄ちゃんが変だ。いつもだけど、今回はより塞ぎ込んでしまって、1人で何かを抱えてる。どうしてボクには教えてくれないの?頼りないのかな、、、明日は、ボクらが嫌いな実家に帰るって言うし。口に出したくないほど、嫌いなんでしょ?何で態々行くの?
ボクは何もわからない。知らない。いつも、いつも、、、
妹「痛っ」
けどね、ボクにだって秘密はあるんだよ。
妹「くる、しい」
時々、どうしようもなく胸の所が苦しくなる。例えるなら、心臓を誰かに掴まれてるような感覚。年々、酷くなってるんだよね。これは誰にも話してない、ボクだけの秘密。絶対に、バレてはいけない。
「深雨 こちらへ はや あ てる」
この苦しみと共に、いつも誰かの声が聞こえてくる。どこか懐かしいのに、どうやっても思い出せない。愛おしい筈なのに、わからない。このもどかしさにも参ってしまいそう。
妹「誰なんだよっ!」
問いてみても、答えてくれる人なんていない。なのに、ボクはこの声の相手を待ち望んでいるのも事実。どうすれば、良いのだろう。
「深雨!」
妹「!
はぁ、はぁ、、、ゴホッ、コホッ」
そして、もう1人誰かがボクを呼んでいる。もう1人とは違って、安心できて暖かくて。心地よい声。
ボクはこの人の声のおかげで、こうやって苦しみから解放される。でも、この人も誰かわからない。ボクは何も知らないし、わからない。
ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはボクに何を隠してるの?ずっと、ずっとボクはお兄ちゃんのことが大好きだよ。その大きな背中が、ボクを一番に考えてくれる愛情、優しさが。だからこそ、秘密なんてしないで欲しい。ボクだって人のことを言えないけど、でもすごく辛そうなんだよ。お兄ちゃんがボクに一つ、また一つと隠し事をする度に笑顔が無くなっていってるの。気づいてる?
お兄ちゃんにとってはボクが最優先なんだろうけど、ボクにとってはお兄ちゃんが居て、ボクが隣にいないといけないんだよ。だから、もう無理しないで。直ぐ無理をするくせに、弱音なんて何一つ吐かない。兄妹、、、双子なのにお互い隠し事だらけだよ。兄妹だからって、全てをわかり合う必要があるとは思わないよ。
でも、喜び、怒り、哀しみ、楽しみは共有しようよ。双子だもん。良いことは2倍に増やして、嫌なことは半分に減らしていこう。だから、これ以上苦しまないでよ、、、
妹「お兄ちゃん」
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作者名:犬塚みかこ | 作成日時:2023年1月9日 20時