御幸せにファムファタル／４ ページ47
「み、け、じ、ま、ま、だ、ら」
指で数えた名前は、まだ辛うじて覚えている彼についての唯一の情報であった。
あとたったの数分で、それさえも忘れてしまう。
砂時計のように、見て居て楽しいものではない普通のデジタル時計をこんなに眺める事なんて、もう二度とないだろう。
BGMも何もない、そんな静かな室内に、軽快なメロディが混ざった。
その発信源がスマホからだと知って、漸くデジタル時計から目を離した。
着信音に設定したその音、スマホを手に取り、通話を繋げた。
『こんばんは。ひょっとして、眠っていたかな？』
「…眠れるわけないです」
『はは！それもそうだな』
緊張感のない彼の笑い声に、少しだけ目尻が下がった。相変わらず、時計は急かすように数字を変えていくけど。
『Aさんが忘れる前に、言いたいことがあるんだ、眠いだろうが、少し聞いてくれないか？』
この期に及んで眠いだなんて、言うわけがない。
そう言えば、「Aさんは優しいなあ」なんて、呑気な言葉が返ってくる。
『治す方法が見つからないと言ったが、実は方法自体は分かっているんだ』
「ほ、本当ですか！？」
『ああ、実は図書館に寄った時に気付いたんだがなあ』
「初日じゃないですか！」
何故今まで黙って居たんだ！と、そう怒りを口にする前に、斑さんが続きを話す。
『まあ、俺が死なない限り、Aさんの病気は治らないがなあ』
あっけらかんと語られたその言葉に、自衛本能のようなものか、私の思考はストップした。
とんでもメディカルなその言葉を脳が拒絶しているのか、言葉の意味が理解できない。
『驚くよなあ、俺も知った時は冗談じゃない！って思った。
唯一の救済がこれじゃあ、誰も救われない、と
だから考えた、どうしたらいいのか、どれが最善なのか、考えてたんだ、今日の今まで。』
嫌な予感がした。
でも、口を開けるだけで言葉らしい声は出てきやしない。
『Aさんは、違う人と恋をして幸せになればいい、二人のうち一人でもハッピーエンドを迎えられるのなら上等だと思わないかあ？』
その意味を考えてられるほど、悠長な時間はなかった。
刻一刻と迫るタイムリミットは、もう直ぐそこまで来ていた。
『俺のことを思い出した時は、嫌ってくれて構わない。多分、それは愛じゃなくて、自己満足だろうから。』
「まって、まだ、よく分からない」
『なら時間切れだ、Aさん』
『どうか、＿＿___、＿＿』
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苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました！ (2018年11月6日 0時) (
レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました； (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…！コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…！ (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました！ (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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