御幸せにファムファタル／２ ページ45
先ずは病について初歩的な事を知ろうと、連れてこられたのは近所の図書館であった。
調べ物に最適と言うよりは、近所に住む小学生達が一種の遊び場として活用して居るらしく図書館だと言うのにやや騒がしい印象を受けた。
「忘愛症候群ってマイナーな病気なんですよね？
そんな病についての記述が、こんな図書館なんかで見つかるのでしょうか…」
「騒がしいのが少し瑕だが立派な図書館だぞお、それに、その病を題材にした小説なんかも見つかるかもしれない」
「小説って…」
呆れたように声を上げる私とは対照的に、彼はまるで緊張感のない笑みを浮かべる。
「単純明快！案外、そんなものが答えへの近道だったりするかもしれないからなあ」
反論しようと思ったが、斑さんがそのまま本を抜きペラペラと頁を捲り出したので、不満を抱いたまま、私も医学の本を取った。
まだ実感が湧いて居ない所為か、字を読み解くその作業に熱が入らず、流し読み、斜め読みを繰り返す。
自分の事なのに、なんて良い加減なことかと喝を入れ、再び文字の羅列に目を落とすも、無邪気な子供の声が邪魔をして内容が頭に入ってこない。
元気なのは良いことだ、私だって小学生の頃は横断歩道を四人で並び歩くという交通の邪魔極まりない事をしていたのでこの小学生達を偉そうに咎めることはできない。
しかし、今だけは少し静かにして居てほしいと切に思う。
この騒音の中じゃ斑さんの調べ物も余り進んで居ないだろうと、彼の方へと視線をやれば、意外に熱心に文字を追って居るようであった。
「…斑さん？」
「ん？あぁ、どうかしたかあ？Aさん」
「いえ、熱心に読んでるみたいだったから、何か関係することでも書いてたのかなって」
訊ねれば、彼は惜しげも無く読んでいた頁を閉じた。
「ちょっ、」
「関係ない本だから大丈夫！
最初に手に取った本が面白くてつい読み耽ってしまってなあ」
彼はそのまま本棚へと小説を戻す。
タイトルから察するに、恐らくラブロマンスの類なのだろうけど、本当に病とはなんの関係もなさそうだ。
「本を読むのにも疲れただろう、息抜きに外の空気を吸いに行こうか」
「…いいんですか？」
「なにも直ぐ忘れるというわけではないだろうし、息抜きも必要だぞお」
それもそうかと、その提案に乗る事にした。
実を言うと本を読むのにも飽きて来たところだったと素直に打ち明ければ、彼は「Aさんらしいなあ」となんとも複雑そうな表情を浮かべた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
苺果汁(プロフ) - とくめい様、ねむい様、素敵な作品をありがとうございました！ (2018年11月6日 0時) (
レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
苺果汁(プロフ) - コメント失礼致します。殆どの夢主やあんスタキャラが自殺を選ぶ中で三毛縞さんだけが彼女の幸せを願って生き続けることを選んでいるのが胸に刺さりました。三毛縞さんのソロ曲が彼の本心であるのなら本当にそう行動しそうだなと思い、思わず涙が出てしまいました； (2018年11月6日 0時) (レス) id: d7b47249f9 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - まめだいふくもちさん» わああまめさんありがとうございます光栄です…！コメント見た瞬間息止まりそうでした本当にありがとうございました…！ (2018年3月21日 8時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - コメント失礼します。お二人とも好きな作者さまなので、お二人の合作短編が読めてとても嬉しいです。忘愛症候群という切ない題材を繊細な文章で書き上げられていて、どの話も素敵でした。作品を書いてくださってありがとうございました！ (2018年3月18日 21時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
