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"迷" ページ8

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『特異な妖力って…どういうことよ』



「この屋敷の妖怪は入ったものは、絶対に出られないし、指定すれば、その部屋に絶対に辿り着かせない。

"迷"がこの屋敷の特異な性質なのですよ」




Aはごくりと息を呑んだ。





「あぁ、それと…
今しがたこの屋敷にネズミが4匹入ってきたようですよ」



『っ!?』





奴良組のみんなかもしれない。

でも一度入ってしまったら、この屋敷の畏れの範囲に入ってしまう。




先ほどよりも冷静さを取り戻していた彼女はさらに考えを巡らせた。


遠野の"迷い家"みたいなものなのか、と。


遠野の"迷い家"とは、どこまで行っても続く廊下や部屋が入った客人を惑わし続ける怪異だ。



それと同じような畏れだとしたら、畏れの源があるはずだ。






『なら…その源を斬れば、その畏れも解かれるはずでしょ…?

それが見つけられないほど、みんなは弱い妖じゃない…!』



「クククッ、斬ることができれば…ね」



『え?』



「その源の場所が分かったところで、物理的にも精神的にも彼らには斬れませんよ」



『…どういう…意味』



「何故ならその源は…

貴女自身なのですから」



『…っ!?』



「貴女を斬らなければ、この屋敷の畏れから逃れる術はありません。

そもそも、ここに辿り着くことさえ出来ないので、物理的にも無理ですがね」







Aは小さく息を漏らし、俯いた。



男は彼女が諦めたと思った。

だが、そんな簡単に諦められる訳がない。


自分を助けようとしてくれている仲間がいるなら尚更。








彼女は先程…水化を試みたときに気付いたことがあった。

それは、鎖の妖力抑制作用は髪の毛までには及んでいない…ということだった。



つまり、髪の毛だけは水化が可能となる。

その一部を徐々に水化させれば、敵に気づかれることなどない。


しかも、真下は大量の水だ。

カモフラージュを敵が用意してくれたようなものだ。





彼女は少しだけ口角を上げ、水化させた髪の毛の一部をその部屋から逃れさせた。






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作者名:怜。 | 作成日時:2020年8月13日 13時

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