出入りだ ページ1
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「っ!?」
一瞬の邪悪な妖気を部屋から感じ取った首無は、間髪入れずに彼女の部屋の襖を開けた。
が、…時すでに遅し。
そこはもぬけの殻になっていた。
首無は目を見開き、放たれた爆発的な妖気が、周りの建物を吹き飛ばした。
すると、その音を聞きつけた奴良組の妖怪たちも続々と集まってきた。
「「「首無!!!」」」
毛倡妓は心配そうに首無の方を見ている。
「首無…なにがあった」
リクオが冷静に問いかけた。
背を向けていた首無がゆっくりと振り向く。
彼の瞳孔は開き、鋭い光が宿っていた。
…しかし、同時にその瞳は潤んでいた。
「あぁ…リクオ様…Aが…」
その声は、ひどく掠れていた。
首無は、自身の糸が絡まった拳をグッと握りしめた。
「…姿を消したのか…?」
首無は小さく頷いた。
「……きっとあの場所です…」
首無は今にも飛び出していきそうだった。
「…首無…お前一人で行くつもりじゃねぇだろうな…?」
「ははっ、まさか…
俺が一人で突っ走ってたら、Aに示しがつかないでしょう…」
「ふっ…ならいい…」
リクオはそう言って、周りを見渡した。
「…お前ら…出入りだ」
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作者名:怜。 | 作成日時:2020年8月13日 13時