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「龍斗、お前から話すか？」
猪狩が龍斗くんに話しかける。
「ううん、私が話すことになってたから...A、実はね」
森口さんいいよ、と龍斗くんは遮った。
「早く話さなきゃって、でも間に合わなくて本当にごめん...今日森口さんが話そうとしてくれたこと、俺から話すね。長くくなるかもだけど大丈夫？」
それからおにぎりとパンを袋に戻し、Aの横に置いた。
「...うん、お願いします。」
龍我くんにもたれていたAが、ピンと背を伸ばす。
龍斗くんは感情移入することなく、淡々と真実を話した。
瑞稀さんは初めからAを陥れるために近づいたこと。
Aを孤立させるため自分たちと絶縁させるよう仕向けたこと。
Aを再起不能にさせる代わりに、ワンマンライブが約束されていること。
瑞稀さんたちと約束を交わしたライブハウスのオーナーは、Aが知らないうちに勝手に恨みを持ってしまっているということ。
ただ、原因が北斗さんだということは一言も言わなかった。
自分にもよくわからない、おそらく理不尽なことだろうと言葉を濁し、そんな龍斗くんを見て何か思うことがあったのか、Aもそれ以上聞こうとしなかった。
「森口さんも俺も昨日このことを知ったんだ、まさかこんな早くにこんなことに...」
「A、言ってあげられなくてごめんね。」
龍斗くんの話がひとまず終わると、私もAに声をかけた。
「...ま、これから俺たちとは国交正常化だな。」
「そうだね、ボーカル復活だよ。よろしくね、Aちゃん。」
黙って聞いていた猪狩と龍我くんも、少し安心したように口を開く。
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作者名：Momanao | 作成日時：2021年1月4日 1時
