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帰宅し、早速に岸くんのパーカーを洗濯機に入れる。
朝、家を飛び出たままの、散らかった部屋を片付けているうちに、洗濯が完了。
パンパンと叩いてしわを伸ばし、ハンガーにかける。
そのあとは、のんびりテレビ見たり、本を読んだり、そのうちに、
...スマホの着信音で目が覚める。
あ...。
「もしもし。」
「あ、もしもし、大丈夫?」
「え、何のことですか?」
「何のことって...Aさんが通勤途中に事故に遭ったって、騒ぎになってるよ?」
「うそ...どうしよう。」
「とにかく今日行くね。」
「え、無理しないで!こっちは大丈夫だから。」
「ダメ、無理しても行くから。」
「...はい。じゃあ、待ってます。」
電話の相手は、19時に私の部屋に来た。
「え、元気じゃん。」
「あのですね、実は過大報告致しまして...ちょこっと、膝を擦りむいただけです。」
「えぇー、そうなのー?俺、1日心配してたんだけど!!」
と、ソファーに深く腰を下ろした。
ごめんなさい、と謝る私に険しい顔を見せる。
「A。ちょっとここ座って?」
座っている横をトントンと叩かれ、素直に従う。
「ねぇ、何でLINEくれなかったの?」
「それは...」
それは、偶然居合わせた岸くんという青年に助けてもらって、そのお礼にと無理矢理公園でパンを食べ、そして水遊びまでしてしまったから。
とは言えず、
「あの、恩返しを、」
「何言ってんの?」
「あの...ごめんなさい。うっかり、してました。」
「うっかり?うっかりで俺は忘れられちゃうの?」
「違う!!あとでちゃんとLINEしようと思ってて、でも家に帰ってバタバタしてたらつい寝ちゃってて、気づいたらスマホ鳴ってて...」
「言い訳しないの!」
黙ったまま、私を見つめる。
会社でも見せないような、厳しい表情。
「...はい。報告を怠ってしまいました。本当に申し訳ありませんでした。」
「以後、気をつけるように。」
そう言った途端、ふっと笑顔になり、そのまま抱きしめられる。
「心配したよ。無事で、よかった。」
耳元で聞こえる、少し鼻がかった、優しく甘い声。
「心配させて、ごめんなさい。」
彼の肩に顔をくっつけて、謝る。
「もういいから。」
私の顔を覗き込む、優しい瞳。
「...時間、大丈夫?」
「うん。2時間だけ。」
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作者名:Momanao | 作成日時:2019年9月8日 23時