38 ページ39
(ASide)
...花火大会かぁ。
学生のとき、友達と行った以来。
ふと、思い出す。
クローゼットを開けて、奥をガサガサ探す。
「ありました...」
昨年、"もしかしたら"と淡い期待を抱いて買った浴衣。
結局、1度も袖を通していない。
服の上から羽織り、鏡の前に立ってみる。
...着ていっても、いいかな?
岸くん、びっくりしないかな?
どんな顔、するんだろう。
"似合ってます"って、言ってくれるかな?
可愛いって思ってくれると、いいんだけど。
あれ?
何でこんなに岸くんの反応を気にしちゃってるんだろう?
...実は、公園で見つめ合ってしまったときから、時折岸くんのことを意識してしまっている。
例えばエレベーターで、
何気に自分が壁になってくれてるときとか、
壁になってくれてる腕から見える血管とか、
ふとしたときに見せる大人っぽい表情とか。
あどけない、爽やかな好青年が、男の人に見えてしまうときがある。
...ダメダメ。
これ以上、余計なこと考えないようにしなきゃ。
岸くんは、若くて、優秀な、未来ある学生さん。
キラキラしてて、私とは住む世界の違う人。
私は、時々キラキラを分けてもらってるだけ。
深入り、できない。
「...でも、楽しみだな。」
63人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Momanao | 作成日時:2019年9月8日 23時