35 ページ36
(ASide)
夢の中、誰かがずっと、頭を撫でてくれていた。
優しく、ゆっくりと。
とても心地良い。
久しぶりに、安心して眠る。
...ん?
目が覚める。
ベッドじゃない。
公園の、芝生の上だ。
初めて、屋外で眠ってしまった。
まだ、頭に優しい手の感触。
夢じゃない。
誰かが、頭を撫でてくれている。
顔を上げる。
目の前には、優しく私を見つめる岸くん。
「あ...」
さりげなく、私の頭から離れる手。
ずっと、そばにいてくれたのは岸くんだったんだ。
「あ...おはよう。」
「うん...おはよう。」
何となく、気まずい。
そりゃそうだよね。
男女がこんな至近距離で見つめ合っちゃってるもん。
「ごめん、寝てしまってた。」
「いや、俺の方が先に寝てしまったから...」
お互い、無言で起き上がる。
それから、"じゃ、解散で"と、帰り支度を始めた。
まだ少し、気恥しい。
岸くんも照れくさいのか、あまり話そうとしない。
駐輪場の前、
「学生さんは、そろそろ夏休みだね。」
「あ、そうです。試験終わったら、休みです。」
「そっかー。じゃあ、勉強しなきゃね。頑張って。」
「はい...あの、」
岸くんが立ち止まる。
「試験終わって、夏休みになったら、俺、もっと自由な時間増えるんで、また、フリスビーでも、キャッチボールでも、テニスでも...うーん、とにかく何でも付き合うんで、いつでも連絡して下さい。」
私の心の中を読んだのか、その場を和ませてくれる。
「うん。ありがと(笑)。じゃ、また私、お弁当作るね。」
「ホント?!今日の唐揚げ、めちゃめちゃ美味しかったです!」
「そう?よかった(笑)。私の夕ご飯にならないで。」
自転車にまたがる岸くんと別れる。
「じゃ、また。」
「うん、気を付けてね。」
ぺこりと私に頭を下げて、立ちこぎで帰っていく岸くんを見送った。
63人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Momanao | 作成日時:2019年9月8日 23時