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(ASide)
あの後、伊野尾さんからは"ごめんなさい。"とLINEが。
でも、既読スルーしてしまっている。
なんて返信したらいいのか、どんな顔で会ったらいいのか。
不安なまま職場に行くと、伊野尾さんの姿はない。
...そうだった。
確か今週は出張って言ってたな。
少しホッとする。
伊野尾さんからは、全く連絡はない。
寂しいはずなのに、なぜかこれもホッとしてしまっている。
何話していいか、分からないから。
相変わらず怒られながらもぼんやりと仕事をこなし、金曜日。
帰り支度をしていると、LINEの通知に気付く。
...伊野尾さんから。
"今、帰りました。会いに行ってもいいですか?"
え、どうしよう。
一瞬躊躇う。
でも、会いたい気持ちの方が、気まずい気持ちに勝つ。
"はい。大丈夫です。部屋で待ってます。"
寄り道しないで、急いで帰り、部屋を片付ける。
日もすっかり暮れた頃、インターホンが鳴る。
ドアモニター越しに、伊野尾さんが見えた。
玄関に走り、伊野尾さんがドアを触ると同時に開ける。
「うわ!!びっくりした!」
「あ!ごめんなさい!!...お疲れ様です。」
「こんばんは。はい、福岡土産の明太子。」
私にお土産を渡すと、"あー疲れた!"とソファーに座る。
いつものにこやかな伊野尾さんだ。
「あの...ごめんなさい。既読スルーしてて。」
「ううん。こちらこそ、酔ってたとはいえ酷いことしてごめんなさい。反省してる。」
お互い謝りあったあと、顔を見合わせて吹き出す。
伊野尾さんが腕を広げる。
「来てくれる?」
「...うん。」
私は伊野尾さんの胸に顔をうずめた。
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作者名:Momanao | 作成日時:2019年9月8日 23時