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(優太Side)
家にたどり着く。
とりあえず、水を1杯、飲む。
「っ、いってぇ...」
口の中まで切れてる。
リュックを床に放り投げ、ベッドに倒れ込む。
もう、このまま今日は寝よう。
目を閉じる。
何も考えないよう、頭の中を真っ白にする。
しようと、努力する。
...できるわけない。
Aさんのことばかり、浮かんでくる。
泣いていた、Aさん。
男の人と二人でいた、Aさん。
"A"って呼ぶ、男の人。
その人の左手には、指輪。
どういうことか、俺にだって分かる。
そして俺は、関係ない、人。
パッと目を開ける。
ぼーっと天井を見る。
Aさんのことを、思い出す。
目を細め、空を見上げる幸せそうな顔。
俺のくだらない話に、大笑いしてくれる顔。
怒ったらプクっと膨らむ、ほっぺた。
俺を覗き込んで、にっこり笑うAさん。
どんなAさんも、気になって仕方がない。
いつの間にか、いや、もしかしたら初めて会ったときから、
俺はAさんに夢中になっている。
今、気がついた。
俺は、Aさんのことが、好きだ。
どんなに人に非難されることをしてたとしても、俺は責めることは出来ない。
たまらなく、Aさんのことが、好きだ。
でも、Aさんにとって俺は、関係ない人。
あの人は、俺の知らないAさんを知ってるんだろうか。
悔しい。
どうして、先に出会えなかったんだろうか。
あぁ、口、痛い。
今夜は、眠れそうにない。
ポケットからスマホを取り出す。
LINEを開く。
俺の送ったメッセージは、まだ既読になっていない。
"こんばんは。今夜は月がきれいですね。Aさんも、見てる？"
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作者名：Momanao | 作成日時：2019年9月8日 23時
