Plains coreopsis ページ11
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隣の部屋に入ると、見たことない人が数人いた。
既に集中してるのか、私が入ってきたことに誰も気づかなかった。
だから私も気にせず、端の方でレッスンを始めた。
ふと、鏡越しで見たダンスに思わず動きが止まってしまった。
目深く帽子を被り一人で踊る男の子。
彼が一人で踊っているから目に止まったんだと、この時の私は思っていた。
自分のダンスに集中しては彼を見て、また集中しては見てを何度も繰り返した。
そして、夜の11時を過ぎた頃から人が減り始めていった。
一人、また一人と帰っていく。
自分も帰ろうかと腕に着けた時計を見ると、視界の端でまた彼が映り込み。
なぜ気になるのか自分でも分からなかったから、一度真剣に見てみようと彼を凝視した。
滑らかに動く手足に、しっかりとロックをかける動き。
重力を感じさせないジャンプ。
そうか。
私はこの人のダンスに一目惚れをしたんだ。
どうしてそんな動きが出来るのか不思議なほど、良い意味で人間を感じさせない動きは私を虜にした。
彼のダンスに夢中になっていると、彼がこちらに振り向いた。
｢…あの、何か？｣
少し強ばった声で彼はそう話しかけてきた。
｢あっ、いえ！何も…。ただ、｣
どんな顔をしているのか分からない。
でも、彼の声を聞いただけで鼓動が早くなった。
｢お上手で見惚れていました。｣
素直な言葉が自分の口からこぼれ出した。
それには私自身も驚いた。
初対面でこんな事を言ったら引かれるのに…と。
彼は黙ったままだった。
でも、耳と首が赤いのが分かった。
｢…あっありがとうございます。｣
帽子を外し頭を下げる彼。
頭をあげる前に帽子をまた目深く被った。
この日を境に、私は彼からダンスを教えてもらうことになった。
そして彼との出会いから１ヶ月後。
未だに彼を深く知らない。
知っているのは《イ･テヨン》と言う名前と、私より4つ年上でルーキーズだと言うことだけだった。
｢テヨンさん、今日もよろしくお願いします！｣
１ヶ月にしてやっと、彼の人見知りが少し溶けていた。
そんな私も実は人見知りで、毎日話しかけるのに勇気を振り絞っている。
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作者名：ゆうなす
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b115645c0f1/
作成日時：2022年9月29日 18時
