6月のマーチ【エイジ】2

55 エイジside ページ5

数日後。



ツイッターも動画のコメント欄も大荒れだった。
エゴサーチしてもその事で埋め尽くされている。


「やべー…」

「えいちゃん、これはやったね」


隣でそらがご愁傷様って笑ってやがる。
他人事だと思ってんな、こいつ
(確かに他人事なんだけど…)

事の発端は、おるたなさんの動画。
ユーフェスの舞台裏と打ち上げ会場の動画をいつものように撮っていただけ。
そう、いつものように撮ってくれていただけなんです。
だから、おるたなさんは全く悪くない。


他のクリエーターの動画を撮っている時に酔っ払った俺が映り込んでいた。




Aの腰に手を回して。




幸い、後ろ姿しか映っていなくてAの顔は見えないけど、俺が何度も引き止めたり耳元で話しかけていたり、腰に手を回したりする姿はちょくちょく映り込んでしまっているようで。
言われなきゃ気づかないくらい端に小さくしか映ってないけど、見てる人は見てるみたいだ。

おるたなさんのチャンネルもコメント欄が大荒れしてて、ないとーさんからごめんってラインが来てたいた。

いやいや、悪いのは俺なんすよ。


「これ、どうするかなぁ…」


ケータイをいじりながら思わず口から漏れてしまった言葉は、その場の空気を少し重くしてしまっている。


「とりあえず、この動画はおるたなさんに貰うとして」

「もらうんかいっ！」

「だってAと俺の2ショットよ？！貴重すぎて永久保存だわ」

「やべー。ここにやべー奴いまーす！逮捕〜！！！」

「ネットストーカーよりマシでーす！」

「おいっ！」


そらが笑いながら俺を殴ってきて、重たい空気は少しだけ軽くなった。
それでも、不安そうなメンバーの顔。
自分で蒔いた種だから自分で何とかしなきゃいけない。
こんな事、わざわざ動画にする必要もない。俺個人の問題だ。
ツイッターを開き、謝罪の言葉をつぶやこうとした瞬間、ツリメが話しかけてきた。


「ねぇ、えいちゃん」

「ん？」

「俺さ、別にこのままスルーしてもいいと思うよ」

「…なんで？こんなにコメント欄荒れてるのに？」

「だって、えいちゃんは何もやましい事してないじゃん。なんで謝らなきゃいけないの？」

「…おるたなさんにも迷惑かけてるじゃん。お前らにも沢山リプ来てるじゃん。」

「そんなの気にしないよ、俺ら」

「気にしてたら動画なんて撮ってられないよね」


ツリメの言葉にリクヲが反応する。
そらも横から「そーだぞ！」とリクヲと肩を組んでいた。

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