垂れる ページ7
黄身がとろとろとした目玉焼きをかじる。
「どーよ」
『朝から半熟はしんどい』
「そうかよ」
明日は始業式。
つまり生徒たちと初顔合わせである。
その前日にこの行いのだらしなさ。自分でも分かってるんだけどね。
『今日って9時出勤じゃなかったっけ』
「そうなの?じゃあ遅刻しねぇな、ラッキー」
この男の方が何倍もだらしない。
さて、今から帰って支度をするか、このまま宇髄くん家から出勤するか。
帰るべきところだろうが、なんせ体がだるい。
頭も痛いし、動きたくないし…とぐるぐる考えていると
「ここでゆっくりしてけよ」
『頭の中覗かないで』
「俺くらいになるとな、Aのことは大体分かるぜ」
『付き合いの問題だと思う』
そりゃ昔ああいう関係だったら分かるだろう。
ああいう関係っていうのは…そういう関係だ。
『せっかくだけどね、帰る』
「なんで」
『お風呂入りたいし、着替えたいし、色々したい』
「実際のところは?」
『ここにいたくない』
聞くまでもなく分かってるくせに。
「お前ならそう言うよなー…うん、言うよな」
『うん。ありがとね。じゃ』
鞄を持って立ち上がる…前に宇髄くんが寄ってくる。
「帰すと思う?」
予想はしてた、けど、体は固まってしまう。
変な汗が首をつたった。
『帰して』
「大丈夫、仕事には間に合うようにする」
また人の悪い顔。
せっかくの器量が、台無しだ。なんてことはなく
むしろ危険な魅力が増すんだから憎らしい。
距離は、無になろうとしていた。
あぁ、狂う。
『…駄目』
宇髄くんの口を手で塞ぐ。
至近距離にある、ざくろ色の瞳が細くなる。
何を笑ってるんだ。
『ひゃ』
手にぬるっとしたものが当たる。
「A、手ェ退けて」
喋ると息が手のひらにかかって、ひんやりとする。変な感じだ。
はぁ、嫌になってしまう。
『…いい加減にしろ』
「うっ」
腹に拳をお見舞いする。
体を離した宇髄くんは涙目になっていた。
「馬鹿か、派手に馬鹿なのかテメーは!」
『正当防衛』
顔の近くでグーをつくる。
「せっかくいい感じだったのに」
いい感じってなんだ。そんなことになってたまるか。
もう萎えたわ、とあくびをする宇髄くん。
『それじゃ…』
立ち上がって、靴を履いて、ドアを開ける。
開かない。鍵がかかってる。そりゃそうか。
「帰しはしねーけどな。ばーか」
『馬鹿って言う方が馬鹿』
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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)
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